2ページ目 【イラクとヨルダン、むかしはほんとの兄弟国だった】
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【八方美人にならざるを得ないヨルダンの事情】
内憂外患、だから「風見鶏」になるしか生きる道はない?
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ヨルダンにはアラブの代名詞的な石油がぜんぜんでない。主な資源はリン鉱石。農業が主体で、はっきりいって結構経済状態悪いです。
そのため、アメリカなどからの経済援助や貿易が必要不可欠。日本からも、多くの援助を受けています。
一方、隣国には超強力国家に成長してしまったイスラエルが。これは大変な脅威です。そこで、他のアラブ諸国とは一線を画してイスラエルとは和解してしまいました。
それどころか、1960年代末にヨルダンに拠点を構えてイスラエルにゲリラ攻撃を仕掛けていたPLO(パレスチナ解放機構)を1970年弾圧の末追放(ブラック・セプテンバー)。
しかし、イスラエルからの難民を合わせて国民の6割強がパレスチナ人。かれらはイスラエルよりも当然ほかのアラブ諸国にシンパシーを感じており、これを無視すると王朝の基盤存立にかかわります。
そこで第1次・第3次・第4次とイスラエルとの中東戦争には形式的には参戦。しかし実はイスラエルと通じていたともいわれ、第3次以外は本当に「形だけ」の参戦に終わっているようです。
そんな複雑な事情を抱えるヨルダン。だけに、今回の毎日新聞記者事件でも、寛容な態度を示さざるを得ないのでしょう。
「中東の風見鶏」「八方美人」といわれながら激動の時代を30年間乗り切ってきたフセイン元国王。はたして息子のアブドゥラーは乗り切っていけるでしょうか。内にも外にも脅威を抱えるヨルダンの今後に注目です。