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トルクメニスタン政治の基礎知識2007(3ページ目)

2月に大統領選挙が行なわれたばかりの国、トルクメニスタンをご存じですか? 永世中立国と国連に認められながら、実はけっこうな独裁国家……トルクメニスタンの今をわかりやすく解説!

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【トルクメニスタンの民族と歴史】
2ページ目 【トルクメニスタンの独裁者・ニヤゾフの登場】
3ページ目 【永世中立国を標榜するトルクメニスタンの外交課題】

【永世中立国を標榜するトルクメニスタンの外交課題】

有数の資源国・トルクメニスタン

トルクメニスタンの石油生産
トルクメニスタンの石油生産は順調に伸び、中央アジアでは最大の生産国となっている。ただそれが経済に反映されているかというと……?
カスピ海という「第2のペルシャ湾」を抱えるトルクメニスタンは、今や中央アジア最大の原油・天然ガス産出国です。

この大きな武器を使って、トルクメニスタンは大国を手玉にとってきました。アメリカにもロシアにも依存しない体制作りをすすめ、1995年には国連総会において「永世中立国」という地位を獲得しました。

また、2005年には旧ソ連圏の国々で作る独立国家共同体(CIS)から「脱退」し、準加盟国の地位にいます。

このような「積極的中立政策」を進めることで、ニヤゾフのカリスマ性は一段と上昇していったと思われます。

とはいえ、原油や天然ガスで得た利益が、そのまま国民のために使われているかというと疑問です。経済成長率は2005年で9.6%と高いものの、インフレ率は2005年13.5%、失業率にいたっては2004年の数字で30.2%(!)という状態です。

しかし、ニヤゾフは豪華な宮殿を作ったり、大きなニヤゾフ自身の金ぴかな銅像(まるで北朝鮮のキム・イルソン(金日成)の銅像を思わせるような)などが作られています。獲得した外貨は国民のために使われていないという、まるでどこかの国のような感じになっているのです。

資源輸出のためにどのような外交を展開する?

トルクメニスタンの石油
トルクメニスタンは石油を売るためにロシアと手を組むのか、それともアメリカか?
トルクメニスタンの資源産業は好調のように見えますが、大きな問題があります。海がなく、タンカーで輸出ができないということです。

そのため、パイプラインを敷いて輸出しなければなりませんが、そのパイプラインをどう引くか、これが外交問題になってきます。

まずヨーロッパ方面に輸出をしようと思えば、ロシアを経由しなければなりません。となれば、ロシアに接近する必要性があるわけですが、それでロシアの影響力が強まるのは、せっかく独立したトルクメニスタンとしてはあまり好ましくないわけです。

カスピ海の海底にパイプラインを通してロシアを回避するという話もありますが、対岸のアゼルバイジャンもまた原油生産国なわけで、すんなり通してくれるかどうかが問題です。

もう1つのルートは、アフガニスタン=パキスタンを通ってインド洋に送るというものです。

アフガニスタンはまだ治安がよくなっていないので早期実現の見通しはありませんが、最大の原油消費国であるアメリカがペルシア湾に入らなくても原油が輸入できるようになるわけで、アメリカの支援が期待できます。

しかし、アメリカといえば自由と人権にうるさい国。トルクメニスタンとの関係が深まれば、いずれ「おおきなおせっかい」をされるのは必至です。

アメリカと組むか、ロシアと組むか……これからのトルクメニスタン外交の大きな課題となるでしょう。

ニヤゾフの死と後継者の大統領就任

さて、2006年12月にニヤゾフ大統領が急死し、急きょ大統領選挙が行われました。

しかし、一党独裁のトルクメニスタンで野党勢力は身動きできず、ニヤゾフの後継者であるディムハメドフ大統領代行(前副首相)が89.23%という高い得票率で、2007年2月に当選、大統領に就任しました。

今後、この独裁的な永世中立国がどういう外交を展開するのか、また民主化をすすめるのかそれとも今の体制を維持しようとするのか、注目したいところです。

◎関連インデックス ロシア地域の政治

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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