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トルクメニスタン政治の基礎知識2007

2月に大統領選挙が行なわれたばかりの国、トルクメニスタンをご存じですか? 永世中立国と国連に認められながら、実はけっこうな独裁国家……トルクメニスタンの今をわかりやすく解説!

執筆者:辻 雅之


(記事掲載/2007.02.22)

トルクメニスタンという国で大統領選挙が行われ、注目が集まりました。しかし、みなさんはこの国のこと、どれだけ知っていますか? 実はいろいろと変わったところのある国みたいです。

1ページ目 【トルクメニスタンの民族と歴史】
2ページ目 【トルクメニスタンの独裁者・ニヤゾフの登場】
3ページ目 【永世中立国を標榜するトルクメニスタンの外交課題】

【トルクメニスタンの民族と歴史】

トルクメニスタンの民族と宗教、自然

トルクメニスタン地図
トルクメニスタンとその周辺国。
中央アジアの西、カスピ海に面した国がトルクメニスタンです。

トルクメニスタンは、中央アジアに多く住んでいるチュルク系(トルコ系)の民族といわれるトルクメン人が約8割を占めている国家です。その他、ウズベク人、ロシア人なども住んでいます。

もっとも、トルクメン人の起源ははっきりとわかっているわけではなく、イラン系の民族がトルコ語系の言語を話すようになったのであるとか、いろいろ説があります。

主要民族であるトルクメン人はスンニ派イスラム教を信仰しています。8世紀にイスラム勢力が侵入し、トルクメニスタンを含む中央アジアのイスラム化が進んでいきました。

ただし、旧ソ連時代は宗教そのものが抑圧されていたため、他のイスラム国ほど顕著にイスラム教的なものをみることはできません。後で述べるニヤゾフ前大統領がすすめた彼自身への個人崇拝政策も、その原因のひとつです。

国土の大半が砂漠で、ほとんどの人々は南部の比較的水に恵まれた地域に住んでいます。首都アシュハバードもイランとの国境のわりと近くに位置しています。

「第2のペルシア湾」ともいわれるカスピ海沿岸であり、中央アジア(カスピ海東岸)では最大の原油・天然ガス産出国となっています。ただ、経済状態はさほどよくありません。

ロシアによる征服

イスラム勢力やモンゴル帝国など、さまざまな王朝が支配してきたこの地域は、やがてロシアの支配下に置かれることになります。

16世紀から始まったロシア帝国による中央アジアの征服活動ですが、19世紀になると今のトルクメニスタンを治めていたヒヴァ・ハーン国がロシアに侵略されるようになります。

ロシアは当時、ペルシア(イラン)の利権をめぐってイギリスと勢力争いを繰り広げていたため、この争いを有利にすすめるために、イランに近いこの地の征服に乗り出したのでした。

こうして1873年、ヒヴァ・ハン国は占領され、その後保護国として事実上ロシアに編入されます。遊牧トルクメン人はその支配に抵抗しますが、1881年のギョクデペの戦いで大敗北し、抵抗は終わりました。このとき、15000人のトルクメン人が「虐殺」されたといわれています。

ただし、イスラム教を弾圧するような動きはあまり起こらなかったので、イスラム教の信仰はそのまま残っていきました。

旧ソ連への編入

侵略
トルクメニスタンはロシアによって「2度」征服された歴史を持つ。
1917年のロシア革命によってそのロシア帝国が倒れると、中央アジアに自立の空気が起きはじめ、各地でムスリム(イスラム教徒)組織の運動がはじまるようになりました。

しかし、経済的にもぜい弱で、近代的な統一国家を持ったことのない中央アジアの国々が自立することはできませんでした。結局、中央アジアはロシア帝国を事実上継承したソ連に再編入されることになるのです。

トルキスタンでは1917年に自治政府が誕生していましたが、ソ連勢力によりたちまち打倒されてしまいました。これに対し、ムスリム勢力らによる「バスマチ運動」という抵抗が行われましたが、これもソ連により鎮圧されてしまいます。

こうして1924年、ソ連内の共和国として「トルクメン社会主義共和国」が作られ、トルクメニスタンとトルクメン人たちはその後60年あまりにわたって、事実上ソ連の支配下に置かれるようになるのです。

次ページではトルクメニスタンの独立と、出現したカリスマ的指導者ニヤゾフについてお話していきましょう。
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