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大統領を支える強力わき役たち(3ページ目)

長官とか副大統領、補佐官など最近よくテレビで見るアメリカ政府の高官たち。彼らの仕事と役割、日本の閣僚との違いについて解説してみました。

執筆者:辻 雅之

【ブッシュ陣営のすごさとブッシュ大統領】

ブッシュ大統領がかかえるスタッフは、「ドリームチーム」とよばれるくらいの豪華メンバーであり、ブッシュ大統領はさしずめ「長島監督」タイプの大統領といえるかもしれません。

パウエル国務長官(ところで誤解する人もいますが、「国務長官」は日本でいう外務大臣に当たるポストです)は湾岸戦争で軍のトップ統合参謀本部長をつとめアメリカを圧倒的勝利に導いた英雄的存在。大統領候補になるのではないかといわれたくらいの人材です。

ただし本人は非常に慎重を好むタイプ。その慎重さが湾岸での大勝利をおさめたのかもしれませんし、フセイン大統領の命脈を保たせる原因になったのかもしれませんが、いずれにせよその慎重さが外交に活かされれば、アメリカがアフガンで「ベトナム」のような泥沼に陥ることはないかもしれません。

ラムズフェルド国防長官はフォード政権で史上最年少の国防長官に就任した人で、外交や安全保障に関する共和党の長老格。田中真紀子外相が批判した「ミサイル防衛構想」を最初に唱えた一人でもあります。チェイニー副大統領の「上司」でもあったというところから、その大物ぶりがうかがえるところです。

チェイニー副大統領もまたブッシュ(父)大統領の国防長官として湾岸戦争でパウエル氏とともに手腕を発揮した湾岸の功労者。またフォード政権の時に史上最年少の大統領首席補佐官になった人物です。

下院議員も10年ほどつとめた経験があり議会にもパイプが太く、アメリカの「首相」的存在になるのではないかといわれています。

ライス国家安全保障問題担当補佐官は黒人でしかも女性ということで注目を浴びていますが、本来はそんなある意味差別的な注目を集める筋合いのないほどの優秀な外交政策専門家であり、特にロシア問題のエキスパートといわれています。

またブッシュ家とは家族同然の付き合いということで、大統領の信任も厚く、これほどうってつけの人材はいないかもしれません。

まさに「ドリームチーム」といった感じのブッシュ陣営ですが、かんじんのブッシュ大統領はどうなのでしょう。そういえば大統領選のときの評判もやれ成績が悪かっただのなんか捕まったことあるらしいだの、あまりよくなかったようですね。

更正してからは(?)テキサス州知事をつとめたくらいですからそんなに心配することもないと思うのですが、やはり自身も方向性としては「細かいことは優秀なスタッフに任せて」自分は大統領の重要な役目である「国民の団結と統合」につとめたほうがいいと思っているようです。

しかし、「21世紀最初の戦争だ」「十字軍だ」とあたかも戦争やりたさそうな発言が少々目立つブッシュ大統領。反米意識をあおってるようなところなきにしもあらず。「スキャンダルまみれ」のクリントン大統領でも、こういうときはもっと落ち着いたコメントするよな・・・と思った人も多いのではないでしょうか。

今のところ「アメリカのイケイケおっさん」的スタイルが共感を得ている感じのブッシュ大統領ですが、今後空爆作戦の進展具合によっては、そのスタイルも通用しなくなるかもしれません。

いくら優秀なスタッフを揃えていても国民の信望をつなぎ止めることができなければ「新しい戦争」に勝つことはできないはず。ブッシュ大統領の今後の発言にも大いに注目していきたいところです。


アメリカ大統領の権限と弱点(Close Up!) アメリカ大統領についての基礎知識について、やさしく説明してみました。

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