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「事務次官」というシステム(2ページ目)

今、なにかと話題の「事務次官」。事務次官とはどういう役職なのか、どのくらい偉い人なのか、事務次官はどのようにして決められるか。ややこしいのですが、できるだけ簡単に説明してみました。

執筆者:辻 雅之

【事務次官というシステム】

省庁官僚のトップが事務次官です。大臣を助けながら、省や庁の事務を整理、監督していくたいへん重要な役職です。

また、各省庁の事務次官たちによって閣議の前に「事務次官等会議」が行われ、閣議で話し合われることについて、事務的な調整が行われています。このような面からも、事務次官の活動はたいへん重要な意味をもっています。

事務次官は前の事務次官が辞める時、大臣によって任命されます。ただし、大臣一人できめるわけではなく、省庁の官僚や、政府首脳などと調整しながら慎重に決めていくのが普通です。

事務次官の候補者はふつう次官待ちポスト、あるいは次官コースとよばれるような役職(審議官、官房長、局長などといったポストがそれです)についている人から選ばれていきます。

また、新しい次官が決まると、新次官と同期の官僚たちは全員自ら省庁から去っていきます。これも慣例というか慣習です。次官の同期や先輩がいると、仕事がやりにくいという配慮からです。

さて、このようなシステムには2つの大きな問題点があるといえます。

1つめは「官僚人事が聖域化してしまう」ということです。

「次官待ちポスト」の人間から次官を選ばなくてはならないとか、次官と同期の官僚は辞めることになっているとか、事務次官を選ぶにあたってはさまざまな制約があります。このようななかで、大臣が自分の判断だけで優秀な人を抜てきしたりということが大変難しくなっています。

実際、官僚の人事システムを抜本的に見直そう、自分の判断でやろうとする大臣はほとんどいません。

しかしこれでは、国民の代表である政治家たちが、行政機関をコントロールするという憲法上重要なシステムが、機能しなくなってしまいます。

2つめに問題なのは、「次官の同期の官僚がすべて辞めてしまう」慣習が、官僚の天下りを増やしているのではないかということです。

事務次官に就任する人はだいたい50代後半が多いので、とうぜんエリート官僚のほとんどは60歳になる前に辞めてしまうことになります。出世の見込みがない人は50歳代前半で辞めてしまうこともあるようです。この高齢化社会の中、優秀な官僚たちがこの若さで引退することはありえず、自然と天下り先を探すことになります。

そして、多くの官僚OBたちが、自分たちがいた省庁に関連の深い企業に天下りしていきます。これが、企業と省庁とのゆ着の原因といわれているわけです。

このようなことから、天下りを減らすためには、どうしても官僚が早く辞めてしまう今のシステムを改善することが必要ではないかといわれています。
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