【日本とアメリカだけの問題ではない→改正は難しい?】
先日の沖縄女性暴行事件以降、日米地位協定の見直し、改正を求める世論が高まりつつありますが、小泉首相ら政権サイドはどうやら消極的なようです。
これにはアメリカとの交渉の難しさがあると思われます。われわれ日本人はこの問題は「日米」だけの問題のように映りますが、現実にはそう簡単ではないようです。
アメリカ軍は世界のさまざまな国に基地を作って駐留しています。そのため、アメリカはそのような国々とも日本と同じような地位協定を結んでいます。
そのような地位協定では、やはりアメリカ軍兵士が起訴前に駐留国側に引き渡されることはないようです。アメリカとの関係が日本以上に深いNATO(北大西洋条約機構=イギリス・イタリアら西ヨーロッパ諸国)との地位協定ではやはり「起訴後に引き渡し」。
日本と同じように敗戦国であるドイツとの地位協定では「刑確定後」に引き渡しですから条件はかなり悪い(ただしドイツ人とアメリカ軍兵士との間で生まれた子どもについての規定などはかなり細かいなど、日本より条件のいい面も多そうです)。
韓国との協定では、ようやく昨年末に「重大犯罪についてのみ、起訴前」に引き渡し可能と改正されることが決まったほど。
このようななか、アメリカが日本のみに譲歩して地位協定を見直す、ということはありえない、というのが日本政府サイドの見方なのでしょう。
そこでいわれているのが「弾力的運用」。協定の改正はできないが、できるだけ日米が協力しあい、自主的にアメリカ軍が早期に引き渡しを行おうというもので、1995年の沖縄少女暴行事件の後、これが日米の当局者の間で確認されてきました。
しかしあくまでお互いの「好意」のうえで行うというのが「弾力的運用」なわけです。この「好意」は今回の事件では少なくとも迅速(じんそく)には発揮されなかったといえるでしょう。
沖縄に現実に重くのしかかっている「アメリカ軍基地」という負担と「度重なるアメリカ軍兵士の犯罪」という事実の前には、「好意」という抽象的なシステムはあまりに無力なようです。
同じように米軍基地を抱える西ヨーロッパ諸国の首脳陣を前に、小泉首相がサミットでどのような提言ができるのか、注目していきたいところです。
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