内閣官房長官を簡単に分かりやすく説明すると
内閣官房長官はニュースによく取り上げられ、「いつも記者会見している人」、そんなイメージを持っている人も多いと思います。それもそのはず、政府の公式見解を発表するというのが官房長官の仕事のひとつだからです。官房長官は、毎日午前・午後に1回ずつ、総理官邸で記者会見をして、記者たちに政府の見解を伝えています。かつて、元号が「平成」になったときに当時の小渕官房長官が、「平成」と筆で書かれた紙を見せた記者会見や、2011年民主党政権時の枝野官房長官が、3.11の対応の記者会見で「ただちに影響はない」とくり返し、激しく非難されたのを覚えている人も多いことでしょう。ちなみにアメリカでは、大統領の方針を記者会見で伝えるのは大統領報道官です。大統領報道官は内閣のメンバー(閣僚)ではありません。元記者やニュースキャスターなど、報道のプロが起用されます。日本の官房長官は、与党の国会議員の中から選ばれます。広報のプロではないので、なかにはスピーチが残念な人もいるのは仕方がないことかもしれません。
官房長官の権力の源=官房機密費(官房報償費)を自由に使える
官房長官の権力の源として、官房機密費(官房報償費)を使えることがあげられます。この機密費は、「内閣の交際費」であり、自由に使うことができます。総理官邸の官房庁室の金庫に現金が入っていて、少なくなると国庫から補充されます。この機密費は内閣が使うお金である以上、当然ながらその出どころは国民の税金です。当然、何にいくら使ったかという証拠となる領収書が必要だと思われますが、なかには公表できない秘密工作に使う資金もあり、領収書は必要ありません。実際に、官房長官や総理の個人的な支出に使われたこともあるようです。一般庶民からすると、まさに夢のような金庫です。官房長官の仕事には総理大臣の臨時代理になることも
官房長官は、総理大臣の身に万一のことが起きたとき、臨時にその職務を代行します。かつては副総理が総理の職務を代行する役目を担当することとされてきました。しかし、副総理は内閣によって、置くこともあれば、置かないこともある固定的ではない存在です。副総理がいない場合は、官房長官が臨時代理を務めるというのが慣習となっています。2000年4月、小渕恵三元総理が脳梗塞で執務不能になったときは、当時の青木幹雄官房長官が総理臨時代理になりました。小渕内閣は副総理を置いていなかったため、青木官房長官が総理臨時代理になり、「病院で小渕総理から臨時代理を頼むと言われた」と説明し、当時マスコミは大騒ぎしました。小渕総理は、とてもそんなことを言える病状ではなかったとされたからです。それでも、青木官房長官は「総理から言われた」と言い切り、結局、否定する決定的な証拠がなく、慣習的に青木官房長官が総理臨時代理になったのです。
官房長官がトップを務める組織・内閣官房は、内閣をサポートする機関
そもそも官房長官がトップを務める内閣官房とは、いったいどんな組織なのか。ひと言で言うと、内閣をサポートする機関です。内閣官房は、内閣のあらゆる事務を担当し、約700名からなる組織です。その組織を管轄する国務大臣が、内閣官房長官です。したがって、官房長官は総理のサポート役といえます。官房庁は官房長官をトップに、各省庁間が協力し合って、スムーズに行政が行なわれるように連絡や調整をするという役も担っています。官房庁のトップである官房長官は、記者会見でのスピーチ力だけでなく、高い調整能力も問われるわけですね。しかも、常に総理大臣とコミュニケーションを密にすることも必要なので、総理からの信頼が厚い人が選ばれます。
内閣官房長官の下には2人の政務担当、1人の事務担当が内閣官房副長官として存在します。政務担当は衆議院と参議院から1人ずつ、事務担当は厚生労働省などの事務次官経験者1人がなります。特に政務担当の副長官は、後に総理大臣候補となることも多く、竹下登、海部俊樹、森喜朗、鳩山由紀夫、安倍晋三は政務担当副長官を務めた後に首相となっています。事務担当の副長官は、事務次官会議を主催することも仕事のひとつです。ここで否決された案件は閣議にあがらないので、事務担当の副長官も大変重要なポジションといえます。
菅義偉官房長官の在職日数は歴代最長
なお、現在の総理・菅義偉(すが・よしひで)氏は官房長官時代、森、小泉両内閣で官房長官だった福田康夫氏を抜いて歴代最長の在職日数を記録。「スキャンダル、失言と無縁の男」「鉄壁のガースー(菅義偉官房長官の愛称)」などと言われてきました。【関連記事】