デフレとはデフレーション(deflation:「収縮」と言う意味)の略で、「物価の持続的下落」を意味します。物価とは、いろいろな物の価格の平均値です。ですから、デフレとは、いろいろな物の価格が全体として平均的に下がっていることを意味します。
すると、デフレになって、いろいろな物の価格が下落するのだから、私たちにとっては、物が安く買えるのでハッピーになれるはずです。にもかかわらず、「日本経済はデフレで大変だ!」と大騒ぎしているのはなぜでしょう?それを理解するには、まず、「デフレとなる原因には2種類あり、良いデフレと悪いデフレがある」ことを知る必要があります。
価格は需要(買いたい量)と供給(売りたい量)によって決まりますが(詳しくは「物の値段の決まり方と役割」へ)、いろいろな物の価格が下がりデフレとなる原因のひとつに不景気(不況)があります。不景気になれば、人々の所得が減りますから需要量も減少します。すると、市場では物が売れ残りますから、価格はどんどん下がっていきます。このようにして、デフレになっていったのが現在の日本です。不景気で人々が物を買わなくなったことが原因で物価が下がるので、経済は大変厳しい状態なのです。
しかも、このようなデフレの場合には、「デフレ・スパイラル」という最悪の状況に陥る恐れもあるのです。「スパイラル」とは「螺旋(らせん)」を意味し、ここでは「ぐるぐる循環すること」を指します。ですから、「デフレ・スパイラル」とは「デフレがさらなるデフレを呼び込んでしまう悪循環」という意味になります。
「デフレ・スパイラル」とは、以下のような悪循環をいいます。不景気で需要が落ち込む物価が下落(デフレ)企業は価格が下がり収入が減る(減収)が、賃金はあまり下げられないので利益が減り(減益)、減収減益という最悪の状況に陥る企業はリストラを行い工場閉鎖、人員削減さらに不景気になり需要が一段と落ち込む物価がさらに下落(さらなるデフレへ)…・・と、デフレがデフレを呼び、不景気が一層深刻になってしまうことです。
日本では、1998年にデフレ・スパイラルに陥るのではないかと懸念されていましたが、1999年に景気の悪化が収まり、デフレ・スパイラルという最悪の状況は避けられたと言われています。
以上が、いわゆる「悪いデフレ」です。これに対し、「良いデフレ」もあります。それは、需要と供給のうち供給側(売る側)の努力で物価が下がることです。企業の努力でコスト(生産費)が低くなり、供給側(売る側)が安く売れるようになり物価が下落することです。この場合には、不景気で需要が減少したわけではありませんから、物価の下落により人々はより多くのものを買うようになり、需要は増加し経済は活発になり景気は良くなっていきます。
現在の日本でも、半額ハンバーガーのように、企業のコスト削減による「良い価格低下」が全体の物価を低下させている面もあります。しかし、日本の物価下落は主に不景気による需要の減少によるものなので、全体としては、現在の日本のデフレは「悪いデフレ」だということになるのです。
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