捏造発覚-そして転落
黄教授は子供たちにとっても英雄だったのだが…… |
この一件は瞬く間に世界に知れ渡り、黄教授の論文は捏造の疑惑がかけられることとなりました。そして12月15日には、黄教授自らがサイエンス誌に論文の撤回を要請したのです。また翌16日には、この事件を調査するための調査委員会がソウル大に設立されました。
最初は韓国人も黄教授を信じ、捏造を信じようとはしませんでした。この問題を取り扱ったテレビ番組には、抗議の電話が殺到したほどでした。しかし、調査が進むにつれて捏造の事実が明らかになり、黄教授自身が捏造を認めて謝罪をしています。
1月の段階で捏造の事実が認められ、黄教授と共同研究者の6人は検察当局の捜査を受けています。しかし一部の韓国人は、2月末になっても黄教授を信じ、捏造を認めようとしていません。中には「これはアメリカの陰謀だ」と主張する人もいます。抗議の自殺までした人も2人いました。
ここまで黄教授が支持されるのは、彼のこれまでの愛国的姿勢にありました。黄教授は「大韓民国は世界に君臨する」など、韓国人の愛国心を煽る発言を今までに繰り返しています。それによって一部の愛国的な若者の、熱狂的な支持を受けています。
「誇り」を失った韓国
今回の捏造がこれほど大きな騒ぎになっているのは、この研究にかける韓国全体の期待と意気込みによるところが大きいのです。いわば、国全体が黄教授に裏切られてしまったのです。韓国政府は黄教授のために、研究施設建設も含めて数百億ウォン(数十億円)ものお金を投資してきました。また、去年には韓国で初めての『最高科学者』の称号を政府から贈られていました。しかし、今回の事件後その称号も剥奪(はくだつ)されてしまいました。
韓国政府と韓国人は黄教授の業績を自慢し、成果を大いに世界に宣伝していました。ところが、今回の捏造発覚でこれまで宣伝してきたものが全てデタラメであることになってしまったのです。それは、韓国という国家そのものに対する信頼を失ったことにもなります。去年は黄教授を自国の誇りとして扱っていた韓国。それが今回の捏造発覚で失ったものはとてつもなく大きいのです。
【関連リンク】
胚性幹細胞 - Wikipedia
ヒトクローン胚「作製」
2004年3月12日にサイエンス誌に発表された黄教授の論文(英語)
2005年6月17日にサイエンス誌に発表された黄教授の論文(英語)
2005年5月2日付の朝鮮日報の記事