先日、日本PTA全国協議会の調査で「子どもに見せたくないTV番組」の第1位に「クレヨンしんちゃん」が選ばれたと報じられました。
(全体の約12%。ちなみに2位は「ロンドンハーツ」。<複数回答>)
この調査は小学5年生~中学2年生の子どもを持つ保護者を対象に行なわれたもので、「見せたくない」理由としては「子どもが真似をするから」「言葉遣いなどが問題」「内容がバカバカしい」といったもの。
しかしこの結果には、早くも各方面から異論があがっています。
例えば「週刊朝日」の5月16日号には「クレヨンしんちゃん どこが悪い」という反論記事が掲載されているほか、インターネットの中でも識者、一般の別を問わず、多くの反論の声があがっています。
さらに昨年公開された映画「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」は「大人も子供も楽しめ、総合的に芸術的価値がある」という理由で文化庁メディア芸術祭大賞を受賞していることは、皆さんもご存知のとおりです。
また同じ調査の中で「しんちゃんを見せたいか」という設問に対しては、「見せたくない」が50%、そして「見せたい」が44%と、評価はほぼ2分されてもいるのです。
確かにやたらとおしりを出したり、「みさえ」と母親を呼び捨てにする、そして若くきれいな女性にいつもデレーとなってしまうなど、目につきやすい部分で「子どもにはあまり見せたくないな」という要素が多いのは事実でしょう。
しかし子どもと一緒にじっくりと作品を見ていると、特に01年の「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」あたりからでしょうか、ストーリーのベースに家族愛などの大きなテーマがある、まさに「大人も泣ける」作品も増え、しんちゃんに対する認識を新たにする人も確実に増えています。
今回「クレヨンしんちゃんは子どもに見せたくない」という回答を寄せた方々が、「オトナ帝国の逆襲」や「アッパレ!戦国大合戦」を見ても同じ回答をするのか、子どもと一緒に「真剣」に番組を見た上での感想なのかといった点には、非常に興味があります。
私はといえば、子どもと一緒に毎週しんちゃんを楽しくみていますが、「言葉遣い」や「子どもが真似をする」といった理由ではなく、ときどき別の意味で「う~ん。これはちょっと……」を思わされることがあります。それはクレヨンしんちゃんにおいての「ジェンダー」に関わる部分です。
以前テレビで放映されたものの中に、しんちゃんの母みさえが、10万円するドレス欲しさに、ひまわりを託児所に預けてわさび工場にパートに出るといったものがありました。
結局みさえは「いびり」なおばちゃんやセクハラな上司に耐え切れずに1日でパートを辞めてしまうんですが、託児所にひまわりを迎えに行ったみさえは、「ママのわがままのために預けてごめんね~」とひまわりを抱きしめます。これでは「小さい子を預けて母親が働くなんて・・・」「家事育児は女の仕事」「託児所に預けられている赤ちゃんはかわいそう」という価値観の刷り込みにならないかな? と心配になりましたし、この「家事育児は母の仕事」という価値観は、時々作品のあちらこちらに顔をだします。
昨今いろいろと話題の多い「クレヨンしんちゃん」、そしてテレビが子どもに与える影響に関して、皆さんはどうお考えになりますか?
■「週刊朝日」