長く暮らせる家の方がむしろ安価!?
BMWとプレミオの話は、60年耐用住宅と30年耐用住宅にそのままあてはまります。
60年耐用の長く暮らせる家と30年耐用の家のライフサイクルコストを比較した記事「家は建築費だけで考えてはダメ 」を読んでいただくとおわかりいただけると思いますが、住宅は建築費が同じであれば、耐久性のあるほうが年間コストは安くなります。
「家は建築費だけで考えてはダメ 」の場合、60年耐用のA住宅に60年暮らした場合の総コストは5390万円。片や30年耐用のB住宅に30年暮らした場合の総コストは3725万円。B住宅と全く同じモノを30年後に建て替えた場合、60年間の総コストは7450万にもなってしまいますし、建設費だけでも2700万円×2(30年×2=60年)で5400万円となり、A住宅と同等ですが、これでは、解体費用だけでなく、メンテナンス費用もでません。それに対して、A住宅は3回のリフォーム費用まで見積もっています。
クルマの場合はほぼ同額でしたが、住宅の場合は、60年耐用住宅と30年耐用住宅のライフサイクルコスト試算では、1年間にかかる費用はむしろ60年耐用住宅の方が安くなっているのです。
新築時に住宅の耐用年数と建築費を考えるのに、年間コストを計算してみるのはいいですね |
BMWのように有利なリセールバリュー
60年耐用住宅はリセールバリューの点でも、BMWのように有利です。「家の寿命32年されどローン35年」にある通り、これまでと同じ寿命の住宅を建ててしまえば、32年ではローンが払いきれずに家の寿命がきてしまい、ローンだけが残されてしまいます。建て替えるとしても、最初より30年、トシをとってしまった施主は、ローンが組めるでしょうか?
また、「築30年建て替えか、住み続けるか」にある通り、将来、家を売却しなければならなくなったとき、60年耐用住宅の方が30年耐用住宅に比べて高く売れますし、売却せずに、賃貸にして収入を得るというメリットもあるのです。
もちろん30年耐用住宅にも賃貸にするという選択肢はありますが、寿命がきてしまった住宅よりも、さらにもう30年の寿命があり、外壁なども塗り直している60年耐用住宅のほうが、高額の賃貸料を設定できるでしょう。
長く暮らせる家の目に見えない価値
それ以外にも、長く暮らせる家の価値はあると思います。
というのは、60年の耐久性がある家は、そこに住む人に目には見えない豊かさをもたらしてくれると思うのです。例えば、60年の間には、その家で生まれた子供が小学生から大学生になり、結婚して、また子供が生まれるというできごとも起こるでしょう。そして、その子がまた小学生になって・・・。そういった長い期間にわたって、同じ家で家族が暮らし、たくさんの思い出をつくり上げることができるのです。
家を一世代のものとしてしか考えないのであれば、30年の耐用年数でも十分かもしれませんが、二世代、三世代と住み継ぐことができる家なら、どんなにいいでしょうか。おじいちゃんが建てた家に孫が住み、お父さんが子供のころ柱に付けたキズを見ながら育つといったことも、長寿命の家なら、実現可能なわけです。たとえ、何かの理由で手放したとしても、自分が生まれ育った家が今でも残っているのはうれしいものです。長く暮らせる家は、こういった目に見えない豊かさもあたえてくれるのです。