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これで判断すべき?坪単価マジックに注意!(2ページ目)

住宅の価格を比較するときに役立つ坪単価。でも、正しく理解していないと、マジックにかかってしまいますよ。それってどんなこと?

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

大きい家の方が安くなる!?

坪単価の第1のマジックは、住宅の広さに関係があります。前ページで説明した通りならば、坪単価が高い家が価格の高い家となります。けれども、次の場合はどうでしょう ?

設備・仕様がほとんど同じで延床面積が異なる2つの住宅の場合として、

■A住宅  本体価格3000万円、延床面積200平方メートル(約60坪)⇒坪単価約50万円

■B住宅  本体価格2500万円、延床面積150平方メートル(約45坪)⇒坪単価約55.5万円

A住宅の坪単価は約50万円ですが、B住宅の坪単価は約55.5万円となります。

本来なら、延床面積が広く、本体価格の高いA住宅のほうが価格の高い家になりそうですが、坪単価で比べると、B住宅のほうが5万円以上も高い住宅となります。このように坪単価は、延床面積が小さい住宅では、割高になるという傾向があるのです。

なぜ、小さい住宅のほうが割高になるか、それは本体価格を延床面積で割った数字なので、延床面積が大きくなれば、当然、坪単価は小さくなっていくわけです。そのときに注目してほしいのは、延床面積に関係なく、1軒の住宅に必要な設備の数があまり変わらないことが挙げられます。例えば、二世帯住宅でもない限り、一般的な新築住宅なら、キッチンや浴室は大抵1箇所、トイレは2箇所でしょう。玄関ドアや勝手口もそれぞれ1箇所ずつだと考えられます。もちろん、どんなシステムキッチンを選ぶかによって坪単価は変わりますが、延床面積が半分だからといって、設備機器にかかるコストが半分ですむということにはなりません。このように設備機器などにかかるコストが坪単価はもちろん、本体価格に大きく影響してくるのです。

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本体価格が同じ家の場合、延床面積が小さい家のほうが坪単価は低くなります

坪単価の変動要素は?

第2のマジックは、坪単価は変動しやすいものだということです。

前でも少しだけ触れたように、どんな設備機器選ぶか、設備機器のグレードや数によって、坪単価は上下します。500万円もするような豪華なシステムキッチンを選べば、当然のことながら本体価格はアップしますし、その数字から算出した坪単価も上がります。また、二世帯住宅でキッチンや浴室などの数が2箇所に増えるというようなケースも、変動要素となります。

さらに、外壁材や床材、壁材なども大きく影響すると考えたほうがいいでしょう。特に、外装や内装は、ほんの数万円しか変わらないとワンランク上のものを選んだとしても施工面積が大きいので、全体の価格を大幅に押し上げることになります。そういった点では、屋根材も同じです。しかも、屋根の場合は、屋根形状や勾配が価格にも関係してきます。屋根の形が複雑になればなるほど価格は上がると思ったほうがいいでしょう。屋根勾配も極端な急勾配などは、かなり工事費が高くなるようです。

さらに、仕様には「オプション」という「魔物」もあります。住宅も商品だととらえると、自動車と同様に、標準仕様とオプションが設定されており、仕様の選択の仕方によって、価格が変わってきます。例えば、標準仕様に満足できず、浴室を豪華仕様のものに変更すると、本体価格がぐんと上がり、結果、坪単価も変わるわけです。

坪単価はあくまで「目安」

このように考えてくると、坪単価は目安となるものの、変動要素が大きい上、その坪単価がどのような条件(広さとか、二世帯住宅かなど)、どのような仕様(どんな設備・内外装なのかなど)から求められた数字なのかを知ってから、比べないと意味がないということがわかっていただけたでしょうか。

実は、先ほどから登場している本体価格以外にも、屋外の給排水工事、ガス・電気工事、外構工事などの別途工事と呼ばれるものがあり、家を完成させるためにはこれらの工事費がどうしても必要になってきます。さらに、引っ越し費用や税金、ローン手数料などもかかります。ですから、単純に坪単価と希望する延床面積を掛けて、家の建設費用はこれで全部だと、早合点しないようにしてください。

こうしてみてくると、坪単価って役に立たない数字だと思われるかもしれません。しかし、間取りや設備を検討している段階で、ほかに目安となる数字が見当たらないのも事実。ですから、変動要素や前提条件など、「坪単価の性質」を正しく理解したうえで、賢く「坪単価」を使うことが大切です。

こういった坪単価の性質上、数値を雑誌などで公表していないハウスメーカーもあります。公表していないのは不親切だからではなく、不確定要素が大きいため、坪単価を公表することで起こる、建て主との齟齬や混乱を避けるためとも考えられられます。前提条件などを確認しながら、予算の話をすれば、費用の相談にのってくれるはずだと思います。

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