『バウハウス』ってご存知ですか?
ファニチャーイスト(=ファニチャー・デザイン大好き人間のこと←イシカワ造語)の皆さんはご存知でしょうが、あらため『バウハウス』についてご紹介します。1919年、ドイツ、ヴァイマールに誕生したバウハウス。
「すべての造形活動の最終目的は建築である」という理念のもと、自己の表現だけに偏らず技術的な力も備えた芸術家を育てることを目的とした教育が施されました。設立当初、バウハウスの作品は表現主義的で合理的な側面を持ち合わせていましたが、その後、合理主義的な一面は保ちながら機械工業との融合を目指す大量生産を目的とした方向へと転換、モダンデザインの先駆者として現在までその名を知られることになります。
一方、近代ヨーロッパでは、家庭や社会における女性のありかたが大きく変化しました。フェミニズムが社会的潮流となり、社会生活での立場、権利、役割と いったものが根本的に見直されるようになっていました。1920年代から第二次世界大戦にかけての家庭生活の現場では、女性の労働を少しでも改善しようと する道具、家具、機器、デザインが次々と開発され、現在にまで繋がる合理的生活スタイルの原型が提案されたのです。つまり、現代のアート、デザイン(絵画、グラフィック、プロダクト、ファッションから建築まで含むアート、デザイン全体)の「紐」をたぐれば、かならずと言っていい程ココにつながるんです。……余談ですが、筆者の母校「東京造形大学」も、バウハウス教育に影響され設立された美術大学です。……
「キッチン」という身近なテーマに焦点
バウハウスデザインは、今日でいう「シンプルデザイン」。つまり、機能的で無駄のないデザインは、とかく男性的であると捉えられることも多いのですが、当時バウハウスでは、多くの女子学生を採用するなど、女性躍進にも一役買っています。そ ういった動きの中で、バウハウスは女性を家事労働から解放するための、新たなキッチンとその周辺器具も提案していました。今回、バウハウス・テイスト「バウハウス・キッチン」展(汐留ミュージアム)では、そのようなバウハウスのキッチン関連の作品を紹介し、新しいデザイン、新しい女性像、新しい生活様式の歴史的意義を問い直そうとするものです。 「キッチン」という身近なテーマにスポットライトを当てた今回の展覧会では、幅広い層の方々にバウハウスの理念や理想に親しんでいただく絶好の機会となるでしょう。
では、次のページにて展示のみどころをご紹介します。