築37年の住宅の場合
こちらの物件は、昭和44年ごろ建てられた、築37年の木造モルタル住宅です。現在でもMさんがご夫妻で住んでいます。高度経済成長期に建てられたもので、間取りは変則の2LDKです。25年ほど前に、一度外壁を塗ったほか、雨漏りしていた箇所を直した程度で、その後は、ほとんど手を入れていないそうです。
37年前は木製サッシが当たり前?! でも、すき間から風が・・・ | 開閉がしにくくなった玄関。今では収納として使用しているとか |
外壁はチョーキングの状態を通り越し、ところどころ、表面がざらざらになったり、黒ずんだり・・・ | 天井を見上げたところ。木肌がはがれてきているのは、以前の雨漏りした部分のようです |
最新の設備機器を入れるには全面リフォームが必要です | 浴室も壁の漆喰がところどころはがれ、このままでは・・・ |
最近、Mさんは、住み替えを考えているそうです。それなりに愛着のある家なのだそうですが、断熱性と気密性のあまりの低さに、ご自身が耐えられなくなっているからだとか。窓を全て閉めていても、カーテンがそよぐほどにサッシまわりが歪み、外の空気が入ってくるためです。そのほかにも、床下には断熱材はなく、板1枚で仕切られているので、板と板のすき間からも空気が入ってきます。もちろん、壁の中にも断熱材は入っていません。これらをリフォームで解決するには、費用がかかりすぎます。
現代の住宅の40年後はどうなる?
さて、今、建てられている住宅は、40~60年後に、今回ご紹介した家のように古びてしまうことはないのでしょうか?
S邸やM邸は、昔の考え方でつくられたもので、その当時の住宅の水準としては、一般的な仕様の家だといってよいでしょう。S邸は、70年間も住み続けることができたという点ではすごい住宅です。けれども、基本性能の点では現代の住宅の足下にも及ばないでしょう。
それは、この30年で住宅に対する考え方が大きく変化したからです。これは、住宅設計の考え方が、高性能・長寿命へシフトしたためです。
現代の住宅の基本性能は、気密性、断熱性、耐震性などが、昔の住宅に比べ格段に違います。メンテナンスやリフォームのしやすさの点でも大幅に違うでしょう。そういう点から考えると、基本性能が高く、建てた後の点検やメンテナンスが考えられた家ならば、必要な時期に適切な手を入れていくことで、建築後60年経っても、高性能で美しいままかもしれません。でも、現代の住宅でも、建築後のことを考えていなかったり、定期的なメンテナンスをしていない家は、性能や美観を維持できるとは思えないのです。