住宅の寿命にも関係があるコンクリート
マンションの耐震強度偽装問題でもにわかに注目を浴びたのが「コンクリート強度」です。鉄筋の配分や量などについての報道も多いのですが、そもそもコンクリートの強度とはどういったものなのでしょうか? また、一般的な住宅にとってどういった関連があるのでしょう?
もし、あなたが「コンクリート強度」が一般的な住宅にあまり関係がないと考えているなら、それは大きな間違いです。なぜかというと、とても古~い既存住宅はともかく、現在、新築されている住宅の基礎には必ずコンクリートが使われているからです。でも、このコンクリートはどれも同じではなく、コンクリートによって強度が違うのを知っている人は少ないのではないでしょうか。強度不足のコンクリートでできた基礎だと、住宅の寿命が短くなったり、地震などで大きな被害を受ける恐れもあります。今回は、住宅を支えるコンクリート強度について考えていきましょう。
分譲住宅ではベタ基礎を採用しているケースがよく見られますが、ベタ基礎にすれば大丈夫というものでもないのです |
コンクリートの強度には2種類ある!
コンクリートの強度といった場合、コンクリートにかかる荷重の種類に応じて、圧縮強度、引張強度、曲げ強度、せん断強度などがありますが、ここでは話を単純化してわかりやすくするために、最もよく取り上げられる「圧縮強度」にポイントを絞って説明していきます。
コンクリートの「圧縮強度」をはかる方法は、コンクリートの供試体(テストピースとも言います)に圧力をかけ、平方ミリメートル当りどの位の圧力に耐えられるかを計測します。
強度を表す単位はN/mm2。例えば、「24N/mm2」といった場合は、1cm2当たり約240kgもの荷重に耐えられるということになります。
ところが、このコンクリートの「圧縮強度」には、「設計基準強度」と、「呼び強度」の二種類があります。(厳密にいうと、「品質基準強度」というのもあるのですが、ここではよく使われる「設計基準強度」と「呼び強度」に絞って話をすすめます)
まずは、コンクリートには強度を表す単位があり、コンクリートの強度には、「設計基準強度」と「呼び強度」のふたつがあることを覚えておいてください。両者の違いについては、このあと・・。
固まっていないコンクリートもコンクリート
そもそもコンクリートとは、一般にセメントに水と砂などの細骨材と砂利などの粗骨剤などを混ぜてつくられます。私たちのような一般人がコンクリートといった場合は、前記のものが固まった状態を指していると考えるのが普通でしょうが、固まる前の、いわゆる「生コン」(正確にはレディーミクストコンクリートというそうです)もコンクリートなのです。
そして、生コンの強度のことを「呼び強度」といい、固まった状態のコンクリートの強度のことを「設計基準強度」といいます。
コンクリートは固まるのに時間がかかる
なぜ、このように強度に種類があるかというと、それはコンクリートという素材の特性に関係があります。コンクリートは、生コンの状態で現場に持ち込まれ、打ち込まれてから徐々に硬化していきます。よって、どの段階で計ったかによって、同じコンクリートでも強度の値は変わってしまうのです。
ちなみに、普通のセメントを使用したコンクリートの硬化力は、打設後、3日後で25%、7日後で45%といわれています。3ヶ月後で約90%の硬化力を発揮し、100%になるのはなんと3年後だそうです。
打設後の固まったコンクリートの強度を表す「設計基準強度」は、硬化力約80%を発現する時点の28日の強度を基準にしています。
また、さらに話をややこしくするようですが、コンクリートは温度によっても固まるまでの時間が違ってきます。住宅の現場で、基礎の型枠をはずす時間が夏と冬で違うのは、このためです。
「呼び強度」は、「設計基準強度」に気温による補正を加えた値のことといわれていますが、要は、現場で荷卸した生コンが所定の材齢(打設後の時間経過を表す用語)までに何N/mm2の圧縮強度を必要とするかの値を記号化したものです。生コンは工場で製造されますが、この「呼び強度」が生コン工場に注文するときの値となります。
繰り返しになりますが、住宅の建築をするときに○○N/mm2の「設計基準強度」にしたいと思ったら、そのときの気温を考慮して、「呼び強度」○△N/mm2の生コンを生コン工場に発注するという具合です。それでは、住宅の基礎に必要なコンクリート強度について、次ページで説明しましょう。