地鎮祭は工事の安全を願う儀式
地鎮祭とは、建物を建てるにあたって、工事を始める前に、土地の神様に工事の安全を祈願して行う儀式のこと。
この写真は地鎮祭を行った後のもの。こんもりと盛り上がった土は鍬入れをしたところです |
最近では、地鎮祭そのものを省略したり、神主さんを招かずに施主が祝詞を読み上げるなどして簡略化するケースもあるようですが、いずれにしても、儀式を行った人からは「やってよかった」という声が多く聞かれます。地鎮祭をすることで、土地そのものや、これから工事が始まるわが家に対する想いが強まるのでしょう。
もうひとつのメリットは、工事関係者と施主が正式に顔を合わせる場であること。このとき、儀式に参加してくれた棟梁をはじめとする職人さんたちには、気持ちとして「ご祝儀」を包みます。施主が職人さんたちに、「お願いします」ときちんとご挨拶をする場でもあるのです。
上棟式では職人さんに感謝を表す
上棟(じょうとう)式とは、工法にもよりますが、木造軸組の場合、屋根の一番高いところに取り付けられる棟木(むなぎ)が上がったとき(ほかの工法の場合もだいたい同じころ)に行う儀式。棟上げまで工事が無事に進んだことに感謝し、この後も建物が無事に完成することを願って行われます。棟上げ(むねあげ)式とか、建前(たてまえ)ともいいます。参加者は、工事に関わった職人さんと施主のほか、近隣の人たちや親戚縁者などです。こちらも一般に、吉日を選んで行います。
上棟式では、まず、棟梁が棟木に幣束(へいそく)を立て、破魔矢(はまや)を飾ります。建物の四隅に酒、米、塩をまいて清めた後、施主が挨拶し、乾杯。用意した料理やお酒で宴席が始まり、棟梁から施主に職人さんたちが紹介されます。このときに施主が職人さんたちにご祝儀を渡します。車で来ることの多い職人さんたちの飲酒運転を避けるために、お酒は用意せず、折り詰めなどを持ち帰ってもらうこともあるようです。
上棟式も、地鎮祭と同様に、地域によって少しずつ風習が異なるようです。餅やお金をまくこともあります。職人さんたちとコミュニケーションをはかる意味でも、事前にその地域の風習を聞いてから行ったほうがよいでしょう。
顔を思い浮かべてもらいながら工事をしてもらう
地鎮祭や上棟式を行ったかどうかが、工事の仕上がりや工期に直接影響するとはいえませんが、職人さんたちからすれば、どんな人が住むのかまったく知らない家をつくるのと、施主の顔を思い浮かべながら作業をするのでは、気分が違うでしょう。「あの家族がこのリビングで団らんするんだろうな」とか、「この部屋はあの子の部屋なんだろうな」といった具合に、施主の顔や生活を想像しながら作業をしてくれたら、そうおかしなことはできないはずです。
地鎮祭と上棟式のほうかに、もうひとつおすすめしたいのは、工事中のお茶だし。お茶だしは義務ではないので自分が負担に感じない程度に、行うとよいでしょう。ただし、お茶を持っていくタイミングは、職人さんたちのお昼休みや10時と15時の休憩時間をねらうなど仕事の邪魔にならないように。そして、現場での振る舞いには十分気をつけて。ぶしつけな発言が、せっかく築いてきた人間関係を壊してしまうこともあるからです。
こうして、施主だけでなく、職人さんたちにも愛情を注がれながらでき上がった家は、職人さんにとっても愛着のある家となることでしょう。築年数を経て、修繕が必要になったり、メンテナンスをする際にも、職人さんたちが「この家が好き」とか、「この家を大切にしたい」と感じてくれればうれしいものです。そして、みんなが「この家を壊すなんて考えられない」という気持ちになり、家を長持ちさせることを考えてくれればいいなあと思います。