古民家/古民家探訪

100年の歳月が美しさをつくる旧篠原家住宅(2ページ目)

栃木県・宇都宮に保存されている旧篠原家住宅。明治時代に建てられたこの建物にはケヤキやサクラ材など高品質の材料が使われていて、100年以上経った今でも、味わいがあり、美しい佇まいを見せていました。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

20畳もある大広間

2階に上がって目に入ってくるのは20畳の広さを誇る大広間。この座敷は婚礼などのお祝い事をはじめとした、接客の場として使われていました。1階から2階の床の間の床柱を兼ね、さらに上にのびて棟木まで達しているという大黒柱は存在感が違います。

大広間"大黒柱
左/20畳の大広間。現代の住まいではこんなに広い座敷はまずないでしょう 右/床の間の写真。通し柱を兼ねるケヤキの床柱が風格を醸し出しています。

座敷の床の間は間口二間半(約4.5m)と、これまた普通の家では見たことのない大きさで、ケヤキの1枚板でつくられているのだとか。床脇の通し棚もケヤキでつくられています。畳は縁付きの畳ですが、よく見ると、二間半の畳です。きっと特注なのでしょう。

110年経っても光り輝く廊下

大広間の東側に長い廊下がありました。この廊下の床板はヒノキ。建築後の手入れが行き届いていることもあるでしょうが、光り輝いていました。やはり、よい材料、特に無垢の木のように自然の素材はいいものです。年月を経て風合いが増すことはあっても、美しさが衰えることはありません。

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ヒノキの廊下は磨き込まれ、光っていました。手すりの笠木の頭頂部は山形に加工されています。来客が手すり越しに庭を見下ろすことを考え、形にこだわったそうです
見学を終えて感じたことは、自然素材のすばらしさ。断熱・気密性についての考え方は、この家が建設された明治時代と現代とは大きく違っているため、断熱材は入っていませんし、開口部の気密性も今の住宅用の製品とは比べものになりません。ですから、暖房のない部屋は寒く、畳も冷たかったのです。

しかし、年月を経て古さが風合いや味わいとなって、美しい家だと感じました。特に無垢の良材を使っているため、全体に頑丈でどっしりとした印象。木のような自然の素材は時間が経っても古びたりせず、いつの時代でも美しいものとして受け入れられます。

私たちは、便利なものや新しいものに目を奪われがちですが、普遍なのものを選び、長く愛する気持ちをもたないといけませんね。最新の部材や、目新しい機能が搭載された設備機器ばかりを追いかけるのではなく、30年、50年経ったときにも、受け入れられる素材やデザインを取り入れて家づくりをしたいものだと思いました。

国指定重要文化財・宇都宮市指定文化財 旧篠原家住宅 
住所:栃木県宇都宮市今泉1丁目4-33
交通案内:JR宇都宮駅駅西口より徒歩3分 鹿沼インターチェンジから約30分
電話:028-624-2200
開館時間:9時~17時(入館は16時半まで)
休館日:毎週月曜(月曜が休日にあたるときは、その翌日)、祝日の翌日(土・日・祝日の場合は開館)年末年始(12月29日~1月3日)
入館料:一般100円(80円) 小中学生50円(40円) 宇都宮市内の高校生以下の方は無料 ( )内は20名以上の団体料金
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