厨房設備機器展2007視察報告
プロの最新キッチンは
RATIONAL
今年の厨房機器展もスチコンと呼ばれるスチームを発生させて短時間調理をおこなうオーブンが各社から出展されている。業務用厨房機器はステンレスの板金加工で作られるものが多く、スチコンの世界でも手づくりに近い完成度の低い製品が多くみられる。
そんな中でドイツRATIONAL社(ラショナル)のスチコンは、製品の精密度、仕上がりなどの完成度も高く、セルフクッキングセンターと名付けられているように、世界各国のレシピがメモリーのバージョンアップで対応できる自動調理メニューの豊富さや調理ソフト面での充実度でも他社の追随を許さないものとなっている。
調理ステージはこの立ち見席と上の教室席の2カ所が用意されているが、調理チーフのシェフの一名をのぞいてすべてが女性スタッフの手で実演されている点も、操作性の高さが実証され非常に好感が持てる。
Total Kitchen Goods Silver Arrow
新潟燕の厨房機器卸のTotal Kitchen Goods Silver Arrow(遠藤商事)のブースでは、エスプーマアドバンスを使ったムースカクテルのデモがおこなわれ人を集めている。
CO2エスプーマは、ガイド記事でも取りあげたことがありますが、エスプーマ・アドバンスは炭酸ガスではなく「亜酸化窒素ガス」を使ってガスを充填しながらムースを作ることができ、最新のレシピに欠かせない道具の一つ。
カラフルな鋳物ホーロー鍋も人気のアイテムだそうで、おなじみのルクルーゼやストウブの新しいラインアップが揃っている。他にフランスREVOL(リヴォル)社の耐熱磁器の調理鍋も人気が高い。
ノーマンインターナショナル
ノーマンインターナショナルの展示ブース。ドイツローゼンタールの業務用食器の代理店でもある同社は業務用厨房関連商品の輸入販売とホテル・レストラン・ビュッフェなどの企画・デザイン・施工までを手がけている。
家庭用のローゼンタールとはひと味違ったデザインの食器が目をひく。
イタリアANGELO PO (アンジェロ ポ)のアイランドキッチンは、少しレトロな雰囲気も持つ最先端の厨房設備だ。
1.2mm以上の厚みがあるオールステンレスの頑強なキッチンは非常に信頼性が感じられる頼もしいデザインと品質を誇っている。
左からハイカロバーナーの2口クッカー、グリル、麺茹パンを組み合わせた例。ガスの角形排気筒がユニークな造形。
展示品以外にもいろいろなスペックの組み合わせができる。
ツジキカイ
石窯デッキオーブンツジキカイはパン焼き用の平窯メーカとして知られている。
ツジキカイのナポリピッツア用石窯「クラシカ・ナポリ」によるナポリピッツアのデモ。強い火力と石の力で窯内上部の温度は600度以上になる。焼き時間が90秒以内のためコルチョーネ(縁の部分)がふっくらと盛り上がって美味しく焼けるのだそうである。
冷凍パン生地について思うこと
今回の厨房設備機器展のデモでも多量に使われていたが、ここ10数年の間にベーカリーショップ用の冷凍パン生地の流通が圧倒的に増えてきた。冷凍パン生地を如何に上手く焼き上げるかを競う様々なオーブンが登場してきています。街のパン屋さんでもそれなりのパンが手に入るようになったのは、まさしく冷凍パン生地の普及によるものなのです。
友人の中には、ベーカリーショップが一からパン生地をこねて焼き上げてることを信じて疑わない人もいますが、現実はほとんど冷凍パン生地という配達されてきたパン生地を店頭に設置した窯で焼いているだけなのです。今回の展示会でも多くのオーブンメーカー担当者からの声として聞えてきた問題は、冷凍パン生地には保存とデリバリーが可能なために様々な薬剤が使われ、高温の窯で焼かれて霧散してしまう薬剤は成分表示を必要としないという日本の食品衛生法の不備を多く耳にしたことです。
諸外国では国の事情によってこの規制値も様々だそうですが、これだけ愛好者の増えているベーカリーショップの美味しいといわれているパンが、我々の知らない添加物で日持ちよくデリバリーされていることは、そろそろ問題にすべき時が来ているのではないでしょうか?
数は少ないのですが、こだわりのパン屋が手づくりで酵母を作り、手づくりで生地を練り上げて、焼き上げていることの大切さを改めて噛みしめています。
■HOTERES JAPAN 2007の公式サイトをご覧ください。
■昨年の「厨房設備機器展」視察記事もご覧ください。
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