ここのお宅の和室は、遠くにいらしゃるお母様のためのお部屋、押入や地袋(じぶくろ)、障子がついた4.5帖の広さです。お母様をたいせつに気遣った、唯一南向きに開放されたお部屋でした。そのお母様がすぐ近くにお引っ越しされ無用のお部屋になってしまったのです。そこで、家族みんなでくつろげるファミリールームに大変身することになりました。
*地袋(じぶくろ): 和室で下部にある小さな物入れ、本来は床の間の脇や違い棚の下に施された。
隣のお部屋はキッチン、廊下を挟んでご主人の書斎になっています。もちろん、きちんとしたダイニングルームやリビングはクラシックな雰囲気でしつらえてあります。ここでは軽いお食事ができ、パソコンをたたきながら楽しいおしゃべりや家事ができ、たまには気分を変えて、和風の落ち着いた雰囲気のなかで食事ができることを改装の軸にしています。もちろん与えられた予算は100万円です。
まず畳をはずして、床暖房付きのフローリング張りに変身です。下地に根太を掛け、根太の間にヒーターと蓄熱ボードをはめ込み、フローリングは無垢材のチェリー材を使用しました。
<“ここで注意!”床暖房には電気式、温水式があります。使用目的や規模、ランニングコストなどを考慮して決めて下さい。フローリングの床暖房では、床材と熱源が一体化されたパネルの簡便な床材もあります。>
ここでは、一般の床暖房用フローリングの特長である(木を積層に重ね合わせ、その表面に本物の板をスライスした薄い板1ミリにも満たない突き板を貼ったもの)熱によるソリや割れに対応するために加工された表面上の仕上がりを嫌い、無垢材にこだわり、ABC商会ユカポッカ(床暖房対応型・抗菌UVセラミック塗装 ※編集部注:2017年3月末で廃番となっております)を使用しました。
窓の障子や壁の左官工事の塗り壁・聚楽壁(じゅらくかべ)、天井・杉柾目すかし張りはそのまま残しました。狭い部屋を広く使うために地袋をベンチとして椅子の代わりとしてます。地袋の高さは45センチ、ちょっと高めのシートハイになります。もちろん座るためには補強をしています。
キッチンとの壁をぶち抜き、キッチンのカウンターから直接出し入れが出きるようにしました。
<“ここで注意!”壁は躯体をささえる構造物です。壁の中に筋カイなどがあるとぶち抜くことができません。設計図面をみて確かめましょう。>
ファミリールームの機能を果たすために造作家具を特別注文し、テレビ、パソコンなどの配線を含め、この部屋で使うこまごました物を収納できるようにしてあります。