写真はいかにもスペインの雰囲気が漂う旧駅舎です。このドームの中が植物園になっています。
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何年か前のスペイン旅行で、高速列車AVEでセビリアに行くためにこのアトーチャ駅を利用しました。その時の驚きと感激が忘れられません。植物園がそのままスッポリと駅舎のドームの中に収まっていました。入った瞬間はただ植物が植え込んであるぐらいに思っていたのですが、歩いてみるとずっーと先まで続いていたのです。
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このアトーチャ駅には、トレドなどのスペインの南部、アンダルシア方面へ向かう長距離列車の発着駅と地下鉄やマドリッド近郊を走る電車、AVEの発着駅の3ヶ所にわかれています。ここは、AVEに乗りもう一つの観光地セビリアやコルドバに行くための観光客もたくさんいるちょっとした国際ロービーの雰囲気があります。そのために両替所、ホテル案内所も備わっています。
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植物は池で囲われ数分おきに水が噴霧されています。まるで霧の中のジャングルみたい、オゾンがいっぱいの感じです。
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広々とした吹き抜け全体が広大な待合室になっており、レストランやショップもあり、それぞれが思い思いの場所で、列車の出発までの癒しの時間を過ごすことができます。
時代を越えてきた建物の中に近代的な設備、そして植物園ともいえる癒しの空間がそなわったターミナル駅です。アトーチャ駅は世界中でも指折りのなかに数えられる美しい駅だという人もいます。
AVEの車内
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しっとりとしたグリーンで統一されたインテリア、高速列車AVEの車内です。女性乗務員のサービスもなかなかなのですが、もっとも心を動かされたのが一つ一つのテーブルの上に置かれたランプです。夕刻、列車に乗る前に見た、車窓からポツポツと洩れるランプの灯りは例えもなく旅情を誘うものでした。
悲惨な状況の爆破テロが放映されるニュースに、よりショックを受けたのは私の脳裏に美しく記憶されたアトーチャ駅と対比させてしまうからなのでしょう。
室内を彩ることをインテリアと云うのなら、アトーチャ駅ほど、これ以上の贅沢な環境はないのではないかと思われます。ふと我が国のターミナル駅のショッピングモールが取り付いた、ただ騒がしいだけの環境にガッカリしてしまいます。どの地のターミナル駅にいっても金太郎飴みたに同じ顔をしています。小さいころ母の手に連れられて行った上野駅を懐かしく思うのは“まぼろし”でしょうか。
(C)March.2004 Copy & Photo by kanno