こぼれる光が導く先には、ミラノインテリアの息づかい
リビング・ダイニングの窓は、3メートルもある天井の高さいっぱいに大きく開かれています。そこには幾重にも重ねられた布を通して、柔らかい光がリビング・ダイニングに広がります。天井から落とされているざっくりした布は、長さもまちまち、カラーも微妙な色違いになっています。それは、光を内部に招き入れるかのように、より静かな光になって室内に陰影を作りだしています。
天井からすっと伸びた一本の線、その先にはライトが付けられオーナメントを照らしています。極端に低いポジションに驚きますが、これがマウロ・リッパリーニ氏の照明の技といえます。あるいはミラノのおしゃれ感覚、美意識なのでしょうか。ホッとする雰囲気に似合う繊細なライトアップの手法がみえます。
壁を重ねて、その中に収納棚を取り付け、そして壁の奥に照明を仕掛けています。奥の壁の色の淡いブルーグリーンと、手前の壁との光のコントラストが室内に陰影を与えています。このような照明の自由な使いこなしは、個性的な印象ですが、安らぎを与えてくれます。
和の奥ゆかしさをモダンに仕立てる
標準仕様は豪華な大理石が敷き詰められています。しかしなぜか、マウロ・リッパリーニ氏のデザインしたエントランスには、「玉砂利の洗い出し」に飛び石が敷かれ、御影石の式台には盆栽が置かれています。氏の日本文化に対する思いと深い知識が顕著に表されています。
エントランスからリビング・ダイニングを眺めると、左のガラスのパーティションはエントランスを仕切る引き戸になっています。右側のスペースには、4.5メートルもあるワイドなキッチンを間仕切るガラスパーティションが収まります。中間に置かれているのは、石のカウンターです。ザラザラした素材感がどこか優しい表情をした御影石が使われています。壁を作らずに、ガラスの引き戸と大きな石の重厚さの対比で空間をゾーニングしています。和の奥ゆかしさを大胆に使い、モダンとの調和をとっているのです。
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