注文住宅/女性視点の家づくり

「84歳サロネーゼ」を生んだリフォーム(上)(3ページ目)

子育てや介護など家族を大切にしながら自己実現できる「サロネーゼ」という生き方が注目されています。その舞台は「家」。今回は84歳女性の人生を大きく変えた、ある設計事務所の事例をご紹介します。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

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高齢姉弟の人生を変えたリフォーム

Aさん
リフォーム前のAさん宅。高齢で掃除ができず、心も塞ぎがちだった(画像提供:以下いずれもアキ設計)
84歳の女性Aさんは、神奈川県内の2階建て一戸建てに74歳の弟と住んでいました。2人とも仕事をバリバリこなしてきた独身。リタイア後も海外旅行に頻繁に出かけるなど第二の人生を楽しんでいましたが、数年前にAさんが軽いケガをして入院したことで一変。入院の慣れない生活で認知症の傾向が現われ始め、退院後も自分の身の回りの片付けができず、自宅は足の踏み場のないほど散らかるようになりました。

高齢の姉弟には片付けを手伝ってくれる家族もおらず、家の中は散らかる一方。家が汚くなるとAさんも家に閉じこもりがちになり、弟が介護ヘルパーの手続きを勧めても拒否。いよいよ自分の手に負えなくなったと感じた弟さんは、Aさんを老人ホームに預けようと考え、その後の自分ひとりの生活のために自宅をリフォームしようと思ったのが、池上さんとの出会いでした。

掃除作戦
定期的な掃除サービスがAさんの心を変え、リフォームにつながった
「最初にお伺いしたときは、失礼ですが……本当にゴミ屋敷のような散らかり様でした。リフォームの打ち合わせをするにせよ、まずは少しでも片付けてからにしましょうと、私とスタッフで家の中を片付けることからスタートしたんです」(池上さん)。

閉じこもりがちで他人と接するのも嫌がっていたAさんを、スタッフが「ファミレスでおいしいパフェを食べさせてあげるから」と連れ出し、その間、数人がかりで丸1日かかって何とか人が歩けるくらいに片付けたとか。この「片付け作戦」を何日か繰り返すうちにAさんとスタッフも打ち解け、Aさんは「若いスタッフと楽しくパフェを食べたい」がために定期的な片付けサービスをお願いすることになったそうです。

「人を招ける家」は「将来、介護を受けやすい家」でもある

寝室リフォーム前
足の踏み場もなかったリフォーム前の寝室が……(↓下の写真へ続く)
「家がきれいになると、人間までも変えられるんですね。84歳のおばあちゃまが口紅をつけ、オシャレをするようになったんです。キレイな下着を買ってあげたらとっても喜んで……。そして『きれいになった家を、片付けだけでなくもっときれいにして、人を呼びたい』とご自分の意志でリフォームを希望するようになったのです」と池上さん。高齢で何年も日用品の買出しができなかったAさんの代わりに、スタッフと新しい食器や服などを買い揃えてあげたそうです。

寝室リフォーム後
リフォーム後の寝室。壁面収納で膨大なモノがスッキリ!
「姉さんを単に老人ホームに送り出すことでいいのだろうか」と躊躇しながらリフォームの依頼をした弟さんも、Aさんの変貌振りに驚き、「高齢者をシェルターのように社会から隔離する老人ホームに詰め込む社会はおかしいのではないか」と池上さんとも話し合い、「体が不自由な高齢者も、住み慣れた自宅にいつまでもいられるような幸せなリフォームをめざそう」というリフォーム計画で互いの想いが一致しました。

さて次回の記事では、リフォームをいよいよ実施。そして完成後、人生が180度変わったAさんのサロネーゼ・ライフをご紹介します。お楽しみに!

【関連リンク】
株式会社アキ設計
横浜サロネーゼ倶楽部

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