馴染のある暖房設備のひとつに
電気式分離型の床暖房。パネル全体が発熱するので、床の温度は均一でムラがない。[HOTひといき] LIXIL
床暖房のメリット 部屋全体、均一な暖かさを保つ
床暖房は、床面を加熱してその床表面から放射される輻射熱によって部屋全体をあたためる暖房システムのこと。輻射熱は人体にあたっても暖かく感じますが、同時に部屋の中の壁や天井、家具などにも吸収され、それらが再び放射されることで、室内の空気を暖めるものです。一般的なエアコンやストーブなどで暖房をした場合、暖かい空気は天井近くに溜まり、床に近い部分は暖かくならないというケースも多くみられます。しかし、輻射熱を利用する床暖房は、床面付近の暖かさはもちろん、部屋全体の温度にムラがなく、均一な暖かさを保つことが可能。部分的な暖房機器ではなく、部屋全体を暖める主暖房として使用することができます。
また、空気が乾燥したり、ほこりが舞うこともなく、石油やガスストーブのように室内で燃焼が行われないので、空気が汚れる心配がないのもメリット。その他、部屋の中に設置しないため、暖房機器の出し入れの面倒がなく、すっきりとした空間を保つこともできます。スペースが広々とすることで、部屋の掃除もしやすいことなどもメリットのひとつでしょう。
床暖房の種類と特徴
■方式 温水式と電気式床暖房の方式は、温水式と電気式に大きく分けることができます。
シルクのような肌触りの電気式床暖房。艶消し仕上げが魅力。引っかき傷や凹み傷に強いため、キャスター付きイスや車イスも使用できる。[電気式(仕上げ材一体型暖房床) あたたか12-PS] DAIKEN
ボイラーなどで沸かした温水を、床下の温水パネル(マット)に循環させて暖房する仕組み。一般的にランニングコストが安く、お湯を沸かす熱源に、ガス、石油、電気などを選ぶことができるのもメリットでしょう。熱源機によって異なりますが、イニシャルコストは高めです。
・電気式床暖房
ヒーターを内蔵したパネルなどに電気を通して暖房するもの。温水式に比べてイニシャルコストは抑えることができ、小さなスペースに取り入れることができるのがメリット。過熱抑制機能を持つPTC発熱ヒーターを使用したタイプ、深夜電力を利用して床下の蓄熱材に熱を蓄えるタイプもあります。
■施工方法 仕上げ材一体型と分離型
電気式・温水式ともに、仕上げ材一体型と仕上げ材分離型が揃っています。
・仕上げ材一体型
フローリングなどの床材に床暖房のシステムが組み込まれているもの。一体型は、熱効率がよく立ち上がりが早いこと、施工が簡単なのもメリット。選ぶことができるフローリングなどの仕上げ材が限定されることもありますが、最近では、仕上げ材のバリエーションも増えてきています。
・仕上げ材分離型
床暖房パネルに好みの床材を組み合わせるタイプ。一般的に、分離型の方が仕上げ材の種類や色・デザイン等を自由に選ぶことが可能。フローリングだけでなくコルクや畳、タイル、カーペットなどの素材を用いることもできるので、さまざまな空間に取り入れやすいでしょう。
いずれも操作は、壁付のリモコンで行い、温度調節やエリア、タイマーなどを簡単に設定することができます。リモコンのデザイン性も高まり、薄型ですっきりしたタイプも揃っています。
LDなどの大スペースに適するA・B面切り替えタイプ。薄壁でも既存の壁にも設置可能。[電気式用 部材 あたたか12用コントローラーCR-N150 2面切り替えタイプ] DAIKEN
ランニングコストを検討して
床暖房は、簡単に取り換えできる設備機器ではないので、耐久性や安全性を重視して選ぶことが大切ですし、イニシャルコスト(設備費)だけでなく、ランニングコスト(燃料費・メンテナンス費など)を充分に検討することも重要なポイントです。たとえば、一般的な温水式と電気式を比較した場合、燃料費は温水式のガスの方が電気式よりも安いといえますが、温水式は機器代が電気式よりも割高で、熱源機の定期的な点検や部品の交換などメンテナンスの費用も必要です。電気式は基本的にはメンテナンスは不要と考えていいでしょう。
もちろん、床暖房の設置スペースなどプランニングによって費用は異なりますし、使い方によってランニングコストも変わってくることを考慮して検討するようにしましょう。
システムや取り入れる範囲は、間取りプランと同時に
プランニングの際には、取り入れたい面積や部屋数、生活スタイルを整理してみることから始めてみるといいでしょう。一般的に、広い面積や数多くの部屋に設置したり、家にいつも誰かが居ることが多いご家庭であれば、維持費の安い温水式が向いています。逆にリビングや寝室だけというように、取り入れる面積が少なかったり部分的な場合、共働きのため使う時間が限られている場合などであれば、電気式が向いていると言えるでしょう。
また、間取りはもちろん、家具の配置などによっても、床暖房のプラン(敷き込みスペースなど)に影響する場合も。将来的な変化も考慮して検討することも大切です。
温水パイプを床材に内蔵した、仕上げ材一体型の温水床暖房。仕上げ材は、2商品12色柄から選ぶことができる。[仕上げ材一体型の温水床暖房 You温すい 床材 ジョイハードフロアーナチュラルウッドタイプ] パナソニック エコソリューションズ
既存の床の上から設置できる、リフォーム向けの商品も
最近では、リフォーム時に取り入れやすい商品も多くみられます。一般的に、仕上げ材一体型は、分離型に比べて厚みがないので施工がしやすく、リフォームに向いているものですが、メーカーや商品によっては、分離型でも仕上げ材とパネルなどを薄くすることでリフォーム向けとしたタイプも。また、既存の床材の上に貼ることのできるタイプも多くみられます。その他、床暖房のシステムは使用できるけれど、フローリングが汚れていたりキズがついているため、床材だけ取り替えたい、という場合に向いている建材も。既存の床暖房の上に張ることができる、熱伝導率の高い基材を用いた床暖房専用の仕上げ材などもみられるようになりました。
給湯システムなどにも関わるケースも。早めに検討を
床暖房のメリットを生かすためにも、建物本体の気密性や断熱性を高めることはとても重要ですし、給湯システムの機器プランにも関わってくるケースもあるので、取り入れる際には、できるだけ早い時期に設計担当者に相談を。ショールームであらかじめ、どのようなタイプがあるのか、特徴などを理解しておくといいでしょう。また、保証期間やアフターメンテナンス体制を確認することも大切なポイントです。【関連記事】
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