基礎知識3 木造戸建て住宅の耐火性能
それでは木造戸建て住宅に求められる耐火性能について具体的に見てみましょう。最初のページで述べたとおり、基本的に木造の住宅を建てることができるのは準防火地域と法22条区域(屋根の不燃化区域)です。しかしこの地域の建てるためには、屋根の不燃化や、外壁と軒裏(※1)で延焼の恐れのある部分を防火構造(※2)としなければならないなどの規制があります。【写真1】今回問題となった軒裏の部分(赤い矢印)。この部分に使用した防火構造材で不正が起こった
※1「軒裏」とは……外壁から飛び出た屋根の下側の部分を指します(写真1の矢印参照)。今回の耐火偽装ではこの部分に使われたケイ酸カルシウム板などが問題になりました。
※2 防火構造とは……外壁と軒裏のみに限定された構造で、周囲でおきた火災に対し、30分以上、大きな損傷を起こさない防火性が求められます。
具体的には、以下のように耐火性のあるものを使わなければなりません。
屋根……瓦、金属屋根、スレートなどの不燃材料でできたもの
外壁……鉄網モルタル、鉄網モルタルタイル張り、窯業系サイディング(防火認定の取れているもの)、金属板サイディング(防火認定の取れているもの)
軒裏……ケイ酸カルシウム板などで防火認定の取れているもの
2007年の耐火偽装は、この軒裏に使われるボード類で発覚しました。
耐火偽装はなにを偽装したのか
家の軒裏は外壁よりも出っ張っているため、近隣火災のもらい火を受けやすい場所です。そのため仕上材で使うボードの耐火性能が決められています。今回の耐火偽装は、一戸建ての家でその軒裏部分に使われるケイ酸カルシウム板で発覚しました。不正があったのは30分、45分、60分の3タイプ。
本来なら火災にあって45分は炎を遮ることができるボードを使わなければならない場所に、実際には25~30分しかもたないものを使用していました。また60分タイプとして使用していたものに40~45分の耐火性能しかなかったそうです。30分タイプについては、メーカー側の発表によると一部のものが「不正は行ったものの性能は満たしている」とのこと。
耐火性が劣るとどうなる?
もし規定より耐火性が劣るものを使用していれば、万が一火事になった時に避難する十分な時間もなく、短い時間で火の手が回ってしまいます。また、法律で決められた耐火時間を守っていないものを使っていれば、違法建築になってしまいます。国土交通省では偽装のあった耐火材については大臣認定取り消しの措置を、一部の耐火材は性能試験をしてから措置を決めると発表しました。国土交通省が発表した、認定取り消しの構造方法の一覧はこちらから確認できます。
【関連サイト】
軒裏・間仕切壁の準耐火性能試験などにおける不正受験について(別紙)pdf
(国土交通省ホームページ)
それでは次のページで、基礎知識その4住宅性能表示でわかる家の耐火性を見てみましょう。