田舎暮らし/週末田舎暮らし・週末住宅

田舎と都会暮しを両立させる人々

自分らしく暮らしたいという、パーソナルな願望が高まる中、都市と田舎にそれぞれ住まいを確保して暮らすマルチハビテーションをする人が増加中。今回はマルハビ実践のためのコツと心得を、体験談を通してご紹介。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

趣味の時間を充実させる人、ボランティアに参加する人、スローライフを実践する人等々、「自分らしく暮らしたい」という、パーソナルな願望が高まってきています。

そんな中、都市と田舎にそれぞれ住まいを確保して両方に暮らすマルチハビテーション(マルハビ)をする人が増加中。効率を追求する都市生活から、少々経済的に苦しくても自分の思いを実現する田舎生活へ。これも自分の家族のライフスタイルにこだわる、新しい田舎暮らしのカタチといえます。

しかし一方、マルハビは決して楽ではありません。都市と田舎の複数住居の購入とそのメンテナンス、移動のための交通費、急ぎの仕事への対応、都会人と地元の人との付合い・・・様々な面での負担が増えるのが現状です。

サラリーマン、広告マン、教師、雑貨屋さんなど、私の知り合ったマルハビ実践者たち。ほとんどの人が「きついよ」「大変だ」と言っていますが、その顔は何だか充実感に満ちているようです。

それでも彼らはマルハビを止めない。それは都会と田舎の両方の生活をすることで、一つの場所で暮らしていた時には代えがたい、見えなかった新しい価値観の発見や、多様な生活場面を提供してくれたからです。

如何にして彼らはデメリットをメリットに変えたか。そして都市生活と田舎暮らしを両立させる方法は?彼らの体験談を通し、てマルハビ実践のためのコツと心得を紹介しましょう。

住むなら田舎、しかし仕事は都市にしかない

関西で友人二人と広告代理店を運営していたSさん(43歳)。数年前、家庭の事情で故郷である九州の地方都市に戻って来ました。家業を手伝いながら、のんびりと仕事を探していたところ、関西の友人から「ブレーンとして企画会議に出席して欲しい」とのお呼びがかかりました。まだまだ広告の仕事に未練があったSさんは快諾。それから彼のマルハビ生活が始まりました。

「車で15分も走れば岩魚が釣れるんです。もうここの自然からは離れられない。しかし田舎の職場は限られてるし、特に広告関連はほとんどありません。都市部のマンションの家賃を友人の会社が一部負担してくれるというので、思い切って決心しました。」
「でも住居が二つあるということは、手元の置いておきたいお気に入りも二つ必要だということに気が付いたんです。本、CD、スニーカー、ステーショナリー等々、欲しい時に手元に無いとついつい同じものを買ってしまう。マルハビの欠点といえばこれですね。」

広告の仕事をするSさんにとって、田舎は静かな環境の中でプランをじっくりと醸成させる場所であり、都会は様々な刺激を受けてヒントに出会える場所になっています。片道2時間半の新幹線も全然苦にならないといいます。この時間帯を都会のビジネスと田舎の生活との切替えに、上手に使っているのではないでしょうか。

住まい兼ショップ、田舎で起業に挑戦中!

Tさん(36歳)は農夫になると宣言しました。それも有機野菜への挑戦。将来の自然食レストラン・オーナーシェフを目指しての決断です。

農業はアマチュアである彼は、プロの農家に日参し弟子入りを果たしました。現在、週の内4日間は、雑草取り、堆肥作り、契約レストランへの野菜の配達と農夫になるため猛特訓中です。

「会社には週3日だけの仕事にしてもらえないかと説得したんです。ワガママですよね。でも十数年間、真面目にコツコツ勤めていたので特例として認めてもらいました。給料は半分以下になったんですけど、頑張って夢を実現するつもりです。」
「会社の近くのマンションと農家とを、軽トラックで行ったり来たりです。農家の朝は早いから街の人間にはちょっときつい。無理をいって農家の空部屋を格安で貸してもらいました。」

Tさんは週の前半を現在の職場で働き、後半で未来のシェフを目指すという理想的なスタイルを手に入れました。でも、経済的には厳しいのが現状です。しかし、マルハビは田舎暮らし実現のための有効な手段になります。夢とガッツがあれば!

「ここがレストランの予定地です!」Tさんに、野菜畑に隣接する雑木林へ案内してもらいました。
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