現在、都心部で新規に建築、供給されるのは、マンションやビルばかり。たまに鉄筋の一戸建はあっても、木造の新築一戸建住宅はほとんど供給されません。もともとの地価が高いために、建売業者が扱いにくいという理由もありますが、どうやらそれだけの理由ではないようです。
少し古いデータになりますが、平成5年における台東区内の総住宅数61,150棟に対して、木造住宅は7,990棟となっています。これは昭和58年の11,480棟と比べ、10年間で31%も減少しています。
建物構造別のデータでは、全建物に対する木造建物の割合は、平成3年には4.4%だったものが平成8年には2.8%へ、木造防火造建物も18.8%から17.5%へとそれぞれ減少しています。
この傾向が続けば、あと20~30年で台東区内からは 「木造住宅」 がなくなってしまいそうです。
なぜ、このような傾向になっているのでしょうか。その原因は 「防災を主眼においた都市計画」 にありそうです。また地域の特性にもよるのですが、都市計画の中での用途地域の定め方にも関係がありそうです。
ピンクの部分が商業地域。平成8年に行なわれた用途地域の見直しにより、台東区内の68.7%が商業地域に指定され、近隣商業地域も9.8%になっています。純然たる住居系用途地域である 「第1種低層住居専用地域」 と 「第2種低層住居専用地域」 は、区内では全く指定されていません。
そして区内の90%以上 (正確な数値はありませんが、推計で約92%) の地域が 「防火地域」 に指定されているのです。防火地域では、原則として新たに木造建物を建築することができません。木造建物が可能な 「準防火地域」 は、根岸と谷中の一部に指定されているに過ぎないのです。この区域でも幹線通り沿いはいずれも防火地域となっています。
従って、ほとんどの区域では、今後建て替える際に (一般の) 木造建物は建築することができず、住宅であっても鉄筋コンクリート造など防火構造にしなくてはならないのです。
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