建て売りも建築家が建てる時代!


場所は西荻窪の住宅地の一角、お屋敷街です。そこにちょっときつきつの感じで 6軒の住宅をつくるというのが、今回の企画です。仕掛けたのは杉並区を拠点に 営業を展開する細田工務店と、ネットコンペで実績のあるウィークエンドホームズ社。
「建築デザイナーに建て売り住宅をつくらせる」という発想は、時代にフィットして いたようで、反響はまずまずだったようです。当日も6軒の売り住宅に対して、すでに 10人から引き合いがあったといいますから、完売も時間の問題ということでしょう。

いっぽう参加する建築家たちの方にとっても、けっこう魅力ある企画だったようで、 公募からプラン提出までわずか3週間というきびしい条件にも かかわらず、応募が23点あったというのはなかなかの結果ではないでしょうか。 その中からさらに絞り込まれた入選作6点から大賞作品を選び出すという作業が 5月19日(日)の公開コンペだったというわけです。

入選作の6点は、以下のとおり。

Forest Story
 水上知英・水上デザインオフィス(33歳 千葉)
アジアンカジュアルハウス
 深川敦司+ランド環境プランニング(25歳 東京)
風と光が通り抜ける現代町屋の家並
 佐藤忠幸・建築工房DADA(43歳 宮城)
The second scene
 谷尻誠・SUPPOSE DESIGN OFFICE(28歳 広島)
町屋モダン--屋根が作る街並み
 山下喜明・ycf設計室(38歳 大阪)
Life with Trees
 佐藤宏尚・佐藤宏尚建築デザイン事務所(29歳 東京)

Forest Story

水上知英さんの「Forest Story」は、屋敷杜のある西荻窪の街並みをいかに 建物に取り込むかを重視したプラン。形状の違った土地割りにしたため1軒1軒が 違った形の住宅になっています。取り込んだ「杜」は2箇所に生かされていて、 それは外の杜と中の杜と名付けられています。
外の杜は、建物の外部にめぐらされた緑のスクリーン、中の杜は建物内部につくられ た中庭に植えられた木々。この内外一体化し2つの杜が、各住戸のポイントとなって いるわけですね。それは視覚的に一直線で結ばれ、杜の中に建物がはさまれたような 仕掛けになっています。
水上さんは、この中庭のことを「インナーフォレスト」と称していました。強いインパクトは残らないのですが、住みやすいい家になりそうな予感はしますよね。

水上知英・水上デザインオフィス
 http://www.mizdesign.com/index4-j.htm


アジアンカジュアルハウス

「アジアンカジュアルハウス」と題された深川敦司さんの作品は、その名のとおり、 アジアのどこかの路地を思わせる小さな共有通路を敷地の中央に走らせたプラン。
通り抜けができるということでは、ある意味、ほんとの「街づくり」をこのスペース 内で実現してしまったということかもしれません。通路には植え込みや石畳やベンチ があって、敷地の境界をどうするかとか、共有部の管理をどうするかという問題を 別にすれば、こうしたプランがいくつか出てくるのは当然と思っていました。
各住戸にはそれぞれテーマが設けられていて、「ひだまりの家」とか「いろりの家」 とか「お風呂の部屋がある家」とかいうふうに特徴がはっきりしています。
このへんも、敷地を最大限に生かそうとした工夫が感じられました。外観もアジア らしく木を使い、統一感があって住みやすそうです。ただ、どうしても他人が通り 抜けできるという点は建て売りの限界(所有権分譲)にひっかかってしまいましたね。

風と光が通り抜ける現代町屋の家並

宮城県の建築家・佐藤忠幸さんの「風と光が通り抜ける現代町屋の家並」は、 最後まで残った作品のひとつでした。
このプランは、各住戸に通り庭(空中テラス)か、あるいは中庭テラスを設け、風が通り抜けていくような開放感を演出しました。v 外観は黒っぽいガリバリウム鋼板に、やはり黒っぽい木製ルーバーを使ったデザイン で統一感もあり、建築家らしい斬新さにあふれています。斜度のある屋根もいい。
ただ、土地の形状をなるべく均一化した試みですが、そのために共有する空間という か余裕がなくなってしまったのが残念。一戸一戸を見れば住みやすそうなのですが、 全体的に見るとちょっとギチギチに建っている印象があって、それも損をしましたね。 だけど、売り出せばすぐに売れきってしまうことは確実だと思いますよ。

佐藤忠幸・建築工房DADA:http://www.arc-dada.co.jp/