つまり、住民が主体となって組合をつくり、土地の取得から共有部をふくむスケルトンの設計・施工の発注までを行っていくというのは従来型と同じですが、そこにコーディネーターが入ってプロジェクトが円滑に進むようにサポートしていくというもの。コーディネーターがどこまで介入するかについては、意見はいろいろあると思いますが、同社の姿勢としては「本来のコーポラティブハウスが持つ問題点を補う」という認識に立っているようです。
それは専門的な知識を持ったコーディネーターが土地購入の手続き、建設会社の選定、融資手続きなどをサポートし、客観的な立場で組合員の意見調整を行っていくというもので、大きな特徴は次の2点でしょう。
(1)最初の土地取得や施工のための融資をサポートする
(2)本来なら100回にもおよぶミーティングの時間を節約し、設計・施工を
一貫してやることで効率を上げ、短い期間で入居可能にする
といったことなどで、とかく時間のかかるコーポラティブを誰でも取得可能にした点で画期的といえそうです。
「契約書の準備から始まって、すべてこちらでコーディネイトします。入居者の方々には、総会に来て内容を確認して捺印していただくという形でプロジェクトを進めていきます。プロジェクトはだいたい1年半から2年ぐらいですが、その間に全体で集まっていただくのは全体説明会から数えて10回ぐらいでしょうか。部屋の自由設計の部分は、設計者と個別に10回ぐらいの打ち合わせが必要。それぞれ建築家とやっていただきますので、人によっては20回という人もおられます」
たしかに、こうした分譲マンションに近い販売方式で、初期資金をコーディネート会社の信用力で調達し(建物がないものには住宅ローンは下りない)、ある程度舵取りをしながら方向性を決めていくやり方であれば、途中でプロジェクトがとん挫したり、いくら話し合っても決まらず延々竣工が遅れていくというリスクはなさそう。日本には定着しやすい形のようにも思えます。ただし、自分の好みの建築家やインテリアデザイナーを連れてきたりすることはできません。水廻りの位置などの情報の共有がむずかしく、みんながそれぞれ無期限で室内デザインに凝りはじめたら、いつまでたっても工事が終わらなくなってしまうからですね。そのため、コーポラティブハウスの設計経験を持つ設計者に依頼するか、自社内の設計部が担当する形をとっています。
自分自身がかつて分譲マンションを買ったとき、まったく変更のきかない販売会社の対応に閉口したことがコーポラティブハウスをビジネスにするきっかけになったという同社代表取締役の梶原文生さんは言います。
「デザイナーズマンションという方向性もあるし、自由設計の分譲マンションをつくればいいのかなと思ったりもします。だけど、ものをつくる面白さとか、よい家づくりって何だろうと自問自答したときに、やはり回答はコーポラティブハウスだったんですね。自由設計でそれぞれがつくって、しかもそこにはゆるやかなコミュニティが形成される。自分の子どもって、誰でもかわいいですよね。それって良いところも悪いところもあるけど、やっぱり自分が育てあげたということに対する愛着じゃないですか。家ってそういうものじゃないのかなって思うんです」
たしかに、納得できる家づくりには、この“自分でやる”ことが本来すごく重要なはず。
カタログを見て、モデルルームを見て買った家には、家族全員で話し合ってつくった家のような愛着は湧かないでしょうと梶原さんは言います。
都市デザインシステムでは、2002年9月現在までに、30棟443戸のコーポラティブハウスを提供してきましたが、アンケート調査を行った結果ではほとんどの人が「満足」と答えているそうです。
気になるのはやはり費用のことですが、それは「まわりが思っているほど安くはない」(事業開発室・広瀬さん)そうです。なぜか? 多くの人は欲が出てきて、室内デザインにも素材にもどんどんいいものを追求していってしまうからだとか。しかしそれは、自分でコントロールできるものですし、「入居者が決まっていて、分譲マンションのような広告宣伝費やモデルルームの設置費といった無駄が省けるぶん、割安な価格で取得できるといえるんじゃないでしょうか」という広瀬さんの言葉どおり、オーダーメイドの良質な空間を手に入れられることを考えれば、「安い」買い物のように思えます。 都市デザインシステムでは、今後、街づくりをトータルでコーディネートしていく事業にも意欲を見せていますが、それはまたの機会にレポートすることにしましょう。
■都市デザインシステム