変形敷地に建つ家
◆都心の狭小な変形敷地に建つ須田充洋さんの作品。
須田さんは「使いやすく安全で精神的に健康な家、豊かで楽しく少し気が利いている家、それはコストや大きさの問題ではありません」と書かれていますが、たしかに住宅は、大きければいいというものではありません。
都心の旗竿地に建つこの家は、狭い私道から垣間見える横顔も、建物と建物の間から突き出た最上階の部分も、オッと足を止めて見たくなるような驚きと楽しさに満ちています。
須田充洋/SUDA設計室
外に閉ざした家
◆「Closed Open」と題された彦根明さんの作品。閉ざされた開放空間とでも言うのでしょうか、外からの視線は完全にシャットアウトしながらも、内部にはふんだんにオープンなスペースがあるという仕掛けは、模型からでも容易に想像できますよね。
都心の細長い狭小地にあって、I型の箱をややずらしながら平行に置いた形に建屋をつくり、そのズレを利用して開放空間をつくる。なかなか心にくい配慮です。彦根さんは「色彩、音、光、風を大切に計画し、土地や環境の条件を最大限に生かした家をめざしている」と書かれていますが、ここはまさに土地の条件を最大限に生かした1軒と言えそうです。
彦根明/彦根建築設計事務所
ペットと暮らす家
◆佐藤宏二さんの作品「Y-House」。
うちの愛犬と同じ3頭のミニチュアシュナウザーと暮らす家です。佐藤さんは「屋外空間を取り込み、家にいながら季節感を感じられる空間をめざす」と書かれていますが、その言葉どおりの1軒ではないでしょうか。
正面リビングの延長にあるデッキテラスにいるのは建て主さんの愛犬のシュナウザーたち。彼らにとって「最高の環境」というのは、そのまま人間にとっても最高と言うことができると思います。おもしろいのは、壁面のいたるところに開けられた小穴。これは犬たちが主人を送り迎えするために開けられたものだそうです。とってもいいアイデアですね。
佐藤宏二/アルゴ
別荘
◆玉置順さんの作品「トウフ」。これはあまりにも有名ですよね。その名のとおり、真っ白な四角い建物は「トウフ」をイメージさせる形状です。中央を貫く大きなワンルームと、そこから派生的に広がる寝室・浴室・キッチンなどの小部屋群というのは、ある意味、日本の伝統建築に見られる手法との共通点を感じさせもします。
この家の特徴は外に向かって大きく開かれていないこと。厚い壁に守られている安心感を追求したプランになっているわけです。玉置さんは自分のアトリエの活用法を次のように書かれています。「無理難題の条件をぶつける → 反応を待つ → 提示案に恋心で接する → ロマンで案をきたえる → しっくりいったらGOサイン」、なるほどです。
玉置順/玉置アトリエ・宇治
◆金富雄・季勝代さんの作品「WARABI COTTAGE」。
こちらは山の斜面に突きだして建つ別荘です。
ごくごくシンプルなひとつの箱に見えますが、この中にはじつはもうひとつの「箱」があって、容れ子構造のようになっています。つまり中に入っていくと、もうひとつ奥まった中に入れるということで、安全なところに「籠もりたい」という欲求を満たしてくれるような場所があるというわけです。
なんだかワクワクしますが、こういうのは別荘ならではの発想ですよ(とくに雪深いリゾート地なら最高!)。金さんは「場、時代、状況に応じてよりよい空間を提案していく」と書かれていますが、まさにその言葉どおりの1軒のように思います。
金富雄・季勝代/デザインオフィス オポジッション