めざしたのは「家具的な密度の空間」
廣部剛司さんが設計した目黒区八雲の住宅を見学してきました。目の前は目黒線・都立大学駅から連続する桜並木、まさに願ってもない環境です。敷地は23坪(建築面積14坪弱)とかなり小さめですが、廣部さんはこの限られたスペースに、建築家の技ともいうべき創意工夫を凝らして「家具的な密度の空間」を実現。狭さを快適な広さに変えることに成功しています。
玄関脇に停まっているのはアルファロメオ。このクルマを懐に包み込むようにして家は建っています。玄関を入るとすぐ左手にバスルームがあり、そのため道路側には開口部がありません。
これではせっかくの桜並木が見えないのではと思うのですが、考えてみれば個人の住宅ですからここに開口部があるとしじゅう外からの視線を気にしなくてはならなくなる。なので1階にはあえて閉ざされたプライベート空間である水まわりと個室(将来的には子ども部屋)を持ってきて、坪庭からの抑制された外光で明るさを確保することにしました。ここは個室といっても引き戸を開放すれば広い空間が生まれますし、もちろんワークルームなど多目的に使うこともできそうです。
英気を養い明日に備える再生の場
見ると、この個室の奥には一段高くなったロフトがありました。子ども用のベッドかなと思っていたら、じつはこれ、外のアルファロメオを包み込んでいた張り出し部分とのこと。クルマが家の一部に入り込んでいるわけですね。ちょっとしたスペースも生活空間として使い切る工夫がここにも生きています。外に向けた窓のない部屋は無機質な空間になりがちですが、そこは愛らしい坪庭と孟宗竹の蒼さがしっかりとカバーしています。
壁づたいにつくられた階段を下りるとそこは快適な地下。洞窟のように仄暗く静謐な空間に主寝室とウォークインクローゼットがあります。クローゼットと壁収納がしっかり確保されているので、かなり広く使えることがわかります? ここは完全に外からは隔絶された世界。ゆっくり英気を養い、明日に備える再生の場所といえるでしょう。壁には廣部さんお得意の意匠的な丸穴が開けられ、コンクリートの無機質な壁にやわらかい表情を与えていました。
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