一時停止をしたのに……
交通違反の反則金を払わなかった場合は、刑事事件として処理される
道路交通法上の反則金とは
スピード違反や飲酒運転等を起こして道路交通法上の義務に違反すると、警察に反則切符を切られ、反則金が課されることになります。反則金は、行政上の義務違反行為に対する制裁であり、行政刑罰の一種です。通常、犯罪をおかすと、警察による捜査を経たうえで、検察官が被疑者の起訴・不起訴を決めます。そして、検察官が被疑者を起訴した場合には、刑事裁判を経て、判決で刑罰が決まります。しかし、道路交通法違反の発生件数は極めて多く、それを一つ一つを起訴して処分することは、裁判所の処理能力などからして、とても困難なことです。また、軽微な道路交通法違反で、罰金刑などの前科がつくことは、私たち国民としても、できれば避けたいところです。
そこで、道路交通法違反については、反則金制度を導入し、「反則金を支払った者については、刑事事件として処理しない」というルールにすることで、罰金刑などの前科もつかず、簡易迅速な処理を可能にしているのです。このような制度をディヴァージョン(非刑罰化)といいますが、ディバージョンについては、反則金制度のほかには、関税等に関する通告処分などがあります。
反則金を支払わないとどうなる?
このように、反則金制度は、「反則金を支払った者については、刑事事件として処理しない」という制度です。ですから、違反者が反則金を支払わない場合には、原則に戻り、刑事事件として処理されることになります。つまり、反則金を支払わないと、通常の刑事手続に則って、検察官が起訴・不起訴を決め、検察官が違反者を起訴した場合には、刑事裁判を経て、判決で刑罰が決まることになります。そして、罰金刑等の有罪判決が言い渡されると、前科がつくことになります。一時停止したことを認めてもらうためには?
こんなことを言うと驚くかもしれませんが、道路交通法違反をして警察官に反則切符を切られたとしても、違反者には、法律上、反則金の支払い義務はありません。反則金制度は、あくまでも、「違反者が、反則金を自主的に支払うことによって、刑事事件として処理しない」という制度ですから、反則金を課されたこと自体について、不服を申し立てる方法はありません。そして、一度、反則金を払ってしまうと、その後、刑事裁判等で、無罪を争うことができなります。そのため、道路交通法違反がないことを公に認めてもらうためには、その前提として、反則金を支払ってはいけないことになります。そのうえで、検察官によって起訴されるのを待ち、その後、刑事裁判になってから、法廷で、道路交通法違反の事実がなかったことについて、争う必要があります。ただし、裁判の結果、有罪になると、罰金刑等が課されて、前科がつきますので、注意が必要です。