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保育園と子どもの命について考える

埼玉県川口市で、お散歩中の保育園児に脇見運転の車が突っ込み、園児4人が亡くなるという悲しい事件が起きました。この事件から、改めて子どもの命と保育園とのかかわりについて考えてみましょう。

猪熊 弘子

執筆者:猪熊 弘子

子育てガイド

「ママ、行ってらっしゃい!」と手をふっていたわが子が、まさか……

お散歩中の園児たちの列に脇見運転の暴走車が衝突。痛ましい事件から見えてきたこととは……
保育園に子どもを預けている親にとっては信じられない、悲しい事件が起きました。9月25日午前、埼玉県川口市の市道で、カセットテープを操作しようと脇見運転をしていた乗用車が、お散歩中の園児たちの列に突っ込み、園児4人が死亡、園児と保育士あわせて17人が重軽傷を負ったのです。

事故に遭ったのは川口小鳩保育園に通う0歳から5歳までの園児33人と、引率の保育士6人。日課のお散歩で、近くの公園まで歩いて向かう途中でした。事故当時、保育園の近くの6m道路の左側を園児が2列になり、車道側に保育士さん3人が縦に並んで園児を守るような形で歩いていました。道路の左側を歩いていたのは、直前に大きな工事用の車が停まっていたため。その車をさけるために一時的に左側を歩き、まもなく右側に戻ろうとしていた時、後ろから暴走車が突っこんできたのです。

朝、いつもと変わりなく園に送り出したわが子が、まさか命を落として帰ってくるとは……。もし自分の子どもだったらと考えて、思わず涙を流した人も多かったのではないでしょうか。私の子どもが通う保育園でも、その日の夕方のお迎えの時間は、事件のことが大きな話題になっていました。ママたちも先生たちもみんな一様に「信じられない!」「ひどすぎる」と憤り、亡くなったお子さんと、突然大切なわが子を亡くして悲しみにくれているであろう親御さんに、思いを寄せていました。亡くなったお子さんたちのご冥福を心からお祈りいたします。

「お散歩が怖い」と保育士さんたち

こんな悲しい事件や事故があるたびに、保育園に子どもを預ける親たちはみんな、「もしかするとその亡くなったお子さんは、自分の子どもだったかもしれない」と考えてしまいます。わたしたちが子どもを預けるということは、子どもの「命」を預けるということ。保育園(幼稚園も同じですよね)には、「命」を預かる、守るという役割があるのです。

事件の後、現場の保育士さんたちに取材すると、「怖くて、しばらくの間、お散歩にも出られなくなりそう」という不安の声がかなりありました。親たちからも「お散歩も怖いんだね」「お散歩は減らしてもらった方がいいのかしら……」と、とまどう意見が多く聞かれました。

事件当時、園児と保育士さんたちがどのように並んでいたかについては、新聞やテレビでも何度も報じられていました。保育士さんたちは、お散歩の列の車道側に並び、園児をガードするように歩いていました。「何かあった時には、身体を張ってでも、子どもたちを守ること」。それが保育士さんの仕事なのです。この大切な事に改めて気づき、毎日、子どもたちを身体を張って守ってくれている保育士さんに、感謝する気持ちがよりいっそう大きくなりました。

最近では、「公立保育園の保育士の給与が高い」ことが、公立保育園を民営化する理由のひとつに挙げられています。でも、普段から身体を張って子どもたちを守るのが保育士さんの本来の仕事だということに気付くと、逆に、責任のない非常勤の保育士さんたちを増やしている現状のほうに、危機感を持ってしまいます。

保育士個人の「資質」の問題と、給与の問題については切り離して考えるべきもの。むしろ、命を守る保育士というプロの仕事の責任の重さについて、保育士さん自身も深く考えてほしい問題だと思うのです。

>>事件から見えてきた課題>>
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