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「会社の経営改善のため401k導入」は経営にマイナス?(2ページ目)

最近ニュースを見ていて気になることがあります。「会社の経営改善のために日本版401k(確定拠出年金)を採用」というニュースです。さも当然のような文脈で用いられる言葉ですが、根本的に誤りがあると思います。経営改善のために401kを入れると大変なことになるかもしれません。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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401kを入れて経営が悪化する可能性もある!

いいことずくめのように見える401k導入も、会社にとってマイナスの要因もあります。そこをしっかり見据えて判断することが重要です。

一般に、確定拠出年金を採用すると、退職金・企業年金のためにかかる費用は増大します。今まで、企業年金では高い運用利回り(年4.5%等)を見込むことによりリーズナブルな掛金で将来の支払い準備ができると考えてきました。しかし、運用については素人である一般社員に401kでもこうした運用を求めることは困難であると考えられており、利回りは低く(年2.0%程度)設定し、掛金を多く出すのが一般的です。
状況にもよりますが、今までの掛金負担と比べ、数割~5割以上負担が多くなることが多いようです(もっと増える場合もあります。しかも景気が良くなっても下がらない固定費です)。これはいってみれば「固定費の負担増」ということになります。

また、確定拠出年金へ移動する場合には、「積立不足のない状態」を作らなくてはなりません。会社が一括拠出するか(大きな負担が生じる)、別途退職金規程等を設けて将来に先送りするか(将来にツケを残す)、社員に減額を同意してもらうか、などの手段が求められます。いずれも、大きな問題が生じる難しい選択肢です。ひとつ判断を誤れば、長い目でみて経営を悪化させかねない要因です。

また、「経営が厳しいから、401kを入れなくてはいけない」という説明を聞いた従業員の反応が、会社にとって大きなマイナスになる可能性も指摘できます。
リストラや希望退職の募集があって、社員が何人も辞めていった会社で、残った社員がモチベーション高く働き続けることは一般に困難です。おそらく「次は私も?」とか「このまま働いても倒産しちゃうのでは?」などと疑心暗鬼に陥ってしまい、会社のために高い意欲で働き続けることは難しくなることでしょう。優秀な人材の流出も懸念されます。
社員に活気がない会社は、どれほどコストを削減しても、結局のところうまくいかないことが多いのは、社員ひとりひとりの稼ぎの積み重ねが会社の売り上げに他ならない、という当たり前のことを見失ってしまうからです。
こうしたタイミングで確定拠出年金を入れることが、社員にとってマイナスに受け入れられるようでは、経営の改善にはまったく役立ちません。

いずれにせよ、「経営改善のため」のような簡単な考え方ではなく、401kの導入は慎重に行わなければならないと言えます。

前向きに401kを入れることができれば、話は違ってくる

しかし、これは401kが悪いのではなく、「401kの入れ方が悪い」のです。そこに注意する必要があります。

確定拠出年金制度は本来、景気が悪いからとか、会社の業績が悪いから、採用するものではありません。会社の退職給付制度(退職金・企業年金)の今後のあり方を考え、会社と社員の責任の分担を考えた結論として採用されるべきものです。

そうしないと「景気が戻れば401kはいらないのでは」というような誤解がやってきます(実際に多くの労働組合はそう感じているようです)。

むしろ、確定拠出年金制度の導入を「会社と社員の関係の再構築」であると考え、退職金・企業年金制度も現役社員のモチベーションにしようと考え、「積極的なコミュニケーションを図るチャンス」と考える会社は401k導入がうまくいっています。これは経営の悪化とは何の関係もないことなのです。

「401k導入=経営悪化とその改善の処方箋」のような誤解をしないで、ニュースを見ていただければ、と思います。


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