401k導入について誤解がある?
最近ニュースを見ていて気になることがあります。それは、経営が悪化している、あるいは改善が求められている企業が「経営改善の一環として日本版401k(確定拠出年金)を入れる」というニュースが出てくることです。最近では、NHKが確定拠出年金制度を導入することを決めたというニュースがありました。記事の書きぶりは「企業年金の積立不足半減を目指すために401kを採用する」というものです。
こうした記事を読んでいてどうも違和感を覚えます。どうやらここには根本的誤解があるようです。そもそも401kを入れればすなわち経営改善になるという単純な考え方はあまり正しいものとはいえません。もしかすると経営者も同様の誤解をしているのではないかと思います。場合によれば、労働組合もそう思っているのかもしれません。
「経営が厳しいので、401kにすればいいのだ」という理屈は、なんとなくもっともらしく聞こえるのですが、注意して向き合うべきだと思います。むしろ、こういう安易な発想で401kにすると、会社に大きな損失を与えるばかりなのではないかとさえ思います。
そこで、少し401kと経営との関係について考えてみたいと思います。
401kを入れたら経営が改善するのか?
確かに、企業年金制度や退職金制度を401kに変更することにより、経営的にプラスになる要素はいくつかあります。まず、「退職給付債務」というものがなくなります。これは簡単にいえば、「社員の退職金や企業年金を支払う責任が現時点でいくらあるか」を数値化したものです。実際に退職金を支払うのはずっと先のことであっても、その責任はすでに会社に生じていますので、上場企業ではどのくらいの水準にあるのか情報開示が求められます。実際には債務合計の現在価値を計算し、すでに積立が終わっている年金資産を引き、実際の不足額のみを決算に載せます。
確定拠出年金に制度を変更すると、資産運用はひとりひとりの社員の自己責任で行われることになり、最終的な支払いについて会社は責任を負わないため、退職給付債務から除外することが認められます。場合によっては債務が1000億円減少するようなこともあり、これを「負担軽減」と考えることができるわけです。
また、確定拠出年金に全面的に移行する場合には、すでにOBとなっている人たちの資産を移せない仕組みになっています。OBの権利相当額のみを管理・運用・給付する閉鎖型の企業年金を作る方法もあるのですが、OBに現金精算をしてしまうこともできます。精算がもし可能になれば、OBについての将来の責任がなくなりますのでこれもまた、退職給付債務軽減になり「負担軽減」になるわけです。
また、会社の積立不足が拡大することもなくなります。近年の積立不足の急増の要因は、世界的な景気悪化に伴う資産運用の下落です。1000億円の年金資産を1050億円に増やす見込みが、株価下落の影響で900億円に減ってしまえば、どんな会社でも決算に悪影響が出るのは当然のことです。この減少額は会社が将来穴埋めすべき追加負担とみなされます。景気が悪いと、本業だけでなく年金の積み立て不足も拡大することになるわけです。
ところが、確定拠出年金では運用は自己責任かつ会社の管理外になりますので、こうした不確定な積立不足の拡大はなくなります。これも「負担軽減」といえるわけです。