男にとっての“夢の女”を演じてあげる
時には、男にとっての“夢の女”を演じてあげるのも、恋には有効な手段なのかもしれない。花魁のようなスーパー才女+床上手になるのは大変だけど!©2007 蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ |
つまり、「簡単には手に入らない、一筋縄では行かない女ほど欲しくなる」男性心理を刺激するプロなのだ。花魁について、劇中ではこう語られる。
花魁てのは器量がいいのはもちろんのこと、学もあって花もあって意地と張りがなくちゃつとまんねえのよ。
花魁は気のない素振りや、甘える仕種などなど、恋の駆け引きに長けてなくてはつとまらない。美貌も品格をそなえ、知識教養を持ち合わせ、三味線や日舞もできて当たり前……その上ではじめて“床上手”どうかが問われるのだ。
たぶん、セックスの行為そのものよりも、落とすまでの過程を楽ませることができるのが、一流の花魁のワザなのだろう。それは、今の時代の普通の男女にも通じるもの。楽しくてやっかいな恋の駆け引きというモノだ(お金は介在しないけどね)。この映画では、そこをたっぷりと味わって観るのも面白い。
しかし、主題は恋の駆け引きではない。究極の恋の達人である花魁たちが、本当に男を愛した時に“どう生きていくのか”なのだ。遊女という運命を受け入れつつも周囲に染まらずに自立しようとする、きよ葉。惚れた男に心酔して身を狂わせていく、高尾。そして、女であることを割り切って武器にしている、粧ひ。3人3様の人生は、今の時代の女性の生き方にも根底で通じるもの。本気で愛した男に裏切られた時に、女はどうするのか? 愛のない結婚はできるのか? とても興味深い。
監督である蜷川実花さんは、映画を通じて考えさえられたという女性の生き方についてこんな風に語っていた。