男と女の絶対的な違いはどこにある?
新聞連載当初から話題を呼んだ『愛の流刑地』が映画化。男性のみならず、女性も楽しめるディープなエンタテイメント作品に! |
原作は『失楽園』のベストセラー作家・渡辺淳一先生。当初は日本経済新聞の連載小説として、オジさまサラリーマンたちの間で大いに話題を呼び、「今朝の“愛ルケ”読んだ?」が合言葉になっていたらしい……と聞いて、男性目線の不倫ファンタジーに違いない。
女性好み、特に独身の30女好みではなさそうだなぁと先入観を持って観に行ったのですが……。 30女的にも、いろんな意味で面白かったし、楽しめたし、考えさせられた。もちろん、男の夢日記的な部分はやっぱり大きいし(そこが面白いっていう話もありますが)、かなりハードでエロティックだけれど、映画全体のエンタテイメント力と、まずは何より主演の2人を中心とした役者の演技力(豊川さん&寺島さん最高! 富士純子さんも!)に説得力があってすばらしかった。
物語は、いきなり全裸の情事シーン、そして、情事の果てに男が女を殺すシーンから始まる(4分半は、息を飲みます)。抱き合っているのはディープな不倫愛を貫いている菊治と冬香だ。互いに絶頂に達した瞬間に「本当に愛しているなら殺して!」と冬香が懇願しつづけたのを聞き届けて、男は首を絞めて殺したのだ。なぜ、女は殺されたいと願い、男は殺したのか?
作家・村尾菊治(45才/豊川悦史)はかつてはベストセラー作品を出したものの、最近は小説も書けず、妻子とも別居して細々と暮らしている。人妻の冬香(32歳/寺島しのぶ)。見合いで結婚したエリートサラリーマンの夫と子供がいて一見、何不自由ない生活を送っているものの、女として言いようのない寂しさと焦燥感を感じている……。
ともに、人生に孤独と虚無を感じている頃に出会った2人は、熱烈な恋に落ち、そして、世界は一変して輝きだす……。菊治は新たな小説を書きはじめ、冬香はどんどん妖艶に女っぷりを増していく。なのに、愛は深まり続けているにも関わらず、2人はまったく別なことを考えはじめる。
これは不倫愛の美味しいところ……甘さ、トキメキ、色っぽさ、背徳感ゆえの強烈な快感、などのファンタジーを徹底的に描いていると同時に、男と女の根源的な違いを描き出している作品だ。
何の目的もない、だからこそ、果てしなく純粋に愛を深められるはずの不倫が、なぜ壊れてしまうのか、なぜ周囲の人はもちろん、当事者をも深く傷つけてしまうのか--もわかる。
不倫の蜜をここまで味わうには、毒も吸わなくちゃならないのかな? とも思った。
次のページでは、“愛ルケ”で彼の不倫願望を測る方法。