「ビール」と聞いてイメージする風味や色合いは? 今回は、私達のビールのイメージそのものルーツにあたる、チェコのビールをご紹介します。

「とりあえずビール!」で出てくるピルスナー

「ビール特有の苦味に、爽快感のある喉越し、きれいな淡黄金色のビール」

そう、私達が居酒屋や焼き鳥屋さんで、「とりあえず、ビールと枝豆!」と注文すると出てくるメインストリームのビールです。ビールの世界では、このようなビールのスタイルを総称して、「ピルスナー」と呼んでいます。

「えっ、ラガーって言うんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですね。「ラガー」という言葉が使われている商品名があるので混同しがちですが、ラガーとは、ビールの醸造方法のこと。ピルスナーは、ラガーという醸造法で造るビールのスタイルの1つです。少々乱暴なたとえですが、ビールをお茶(紅茶、日本茶、中国茶)とすると、ラガーは日本茶、ピルスナーは緑茶といったところでしょうか。

ピルスナーというスタイルのビールは、現在、日本はもちろん、世界各国のビールの主流となっています。それほど、多くの人の口に合う、飲みやすくて美味しいビール。今回は、このピルスナー・スタイルのオリジナルである「Pilsner Urquell(ピルスナー・ウルケル)」をご紹介します。

ピルスナーは世紀の大発明だった

ピルスナー・ビールの元祖であるチェコのビール「ピルスナー・ウルケル」。ウルケルとは「原点」という意味。
ピルスナー・ウルケルが誕生したのは、1842年、チェコの首都プラハの南西約100kmに位置するピルゼン(プルゼニュ)という町。

13世紀から15世紀に、ヨーロッパの都市と商業の発展とともに生まれた産業としてのビール醸造ですが、高品質のビールを大量生産するには、ビール醸造の知識や技術はもちろん、醸造のための設備も必要です。19世紀初め、ビールの品質はまだまだ粗悪なところが多く、高品質のビールを造ることは決して簡単なことではありませんでした。

それは、ピルゼンの町のビールも同様。ピルゼンのビール醸造職人たちは、自分たちの造るビールの品質の安定と向上を模索していました。彼らが考えたのは、新しい醸造所を建設すること。そのために、ビール醸造仲間の1人で、建築家でもある若き青年マーティン・ステルザー氏をビール醸造所建築について学ぶ旅に出します。

そして1840年、旅から戻ってきたマーティン氏により、ピルゼンに近代的な醸造所が建てられたのです。さらに、マーティン氏の旅にはもう1つ成果が。下面発酵ビール(ラガータイプ)の技術が開発されたドイツ・ミュンヘンから、ビール醸造の技術者を連れてきたのです。

1842年、ついに黄金色に輝くピルスナー・ウルケルが誕生。今でこそ、私達のビールのイメージは淡黄金色ですが、当時のビールは褐色や濃褐色だったため、黄金色に輝くビールを目にした当時の人々はとても驚嘆したそうです。

この土地で育つ大麦とホップが、非常に高品質であったこと。そして、ピルゼンの水が、ヨーロッパでは珍しく、カルシウムの含有量やアルカリ度の低い軟水で、ラガー酵母との相性がぴったりだったこと。この2つの要素が世紀の大発明につながったことは、後になって分かったことです。しかし、当時の時代背景を考えれば、これこそ、良いものをつくりたいという職人気質が生み出したビール。最高品質のピルスナー・ウルケルが誕生したのは、美味しいビールを造りたいというピルゼンのビール醸造職人たちの熱意の賜物です。これは試さずにはいられませんね。

次のページでは、ピルスナー・ウルケルを飲んでみた感想をご紹介します。