日本の発展を胃袋からささえた名店

「日本人を胃袋から元気にしようって、ボクの父親がこのレストランを開いたんだよ」そう語りはじめてくれたのは、銀座の洋食みかわやのご主人、渡仲耐治さん(写真右)。まだまだ戦後の混乱のまっただ中にある昭和23年に創業し、約60年もの長い間銀座の歴史と共に、また店を愛するお客さんとともに歩んできた古き良き洋食屋さんです。三越から裏手の路地を入ると、目を引くレトロモダンな洋館風の建物が今回の舞台。創業当時から変わらない昭和の佇まいを今に残す貴重な建築物でもあります。
「銀座4丁目にトウモロコシ畑があったんだよ。信じられるかい?」渡仲さんは終戦直後の写真を見せながら、当時の話しを聞かせてくれました。食糧難に喘ぐ日本では食材を調達するのは至難の技。それでも、その時その時で手に入る限りの最高の素材を使って、お客さまに美味しいものを食べさせたい。それが創業者の思いでした。その理念は現在もしっかりと受け継がれています。何十年もの間、各界の著名人が愛し続ける味とは……?

琥珀色にかがやくコンソメスープ

私が洋食屋さんに行くと、かならず注文するのが、コンソメスープ(1,680円)。シンプルなスープだからこそ、その店の実力が浮き彫りになると思うのです。その琥珀色の液体を口に含むとまず感じるのは牛肉の滋味深い味わいと風味。コクがあるのに、少しも脂っこさは感じません。そして美味しさの第2波では、野菜の甘さやまろやかさが舌を優しく包み込み、最後に全ての食材からかもし出される芳醇な香りが鼻孔を抜けて行きました。

このクリアな味わいを出すためには、料理人が付きっきりで6時間、野菜や丸鶏、牛スネ肉の入った鍋をゆっくりとかき混ぜ続けます。しかも沸騰直前の温度を保ちながら。沸騰してしまうとスープは濁り、エグ味が生じてしまうのです。余分なものを極限まで削ぎ落とし、最高に洗練された旨味だけがこのスプーン一杯の中につまっているのです。


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