リノベーション一軒家カフェ・セレクト4
老朽化して取り壊されそうな一軒家や古いオフィスビルの一室を再生して、新しいカフェをつくる例が増えつづけている。ベースにあるのは、都心の新築ビルの家賃が相変わらず手の届かないレベルにあるという経済的な事情ばかりではない。すぐそばに横たわっている古びたものをもう一度ていねいに眺めたら、ぴかぴかした新しいものにはない魅力が幾つも発見できた、むしろ新しいものより情趣に富んで美しい…という価値観のシフトがあるように思われる。
「なつかしい。おばあちゃんの家に来たみたい」と、カフェを訪れる十代の人々は言う。しかし実際に彼らのおばあちゃんが住んでいるのは、高層マンションだったりするのもまた面白い。
私たちは古い民家をリノベーションしたカフェに、もはや集合的無意識の中にしか存在しない「理想のおばあちゃんの家」を見ているのかもしれない。
※余談になるが、個人的には「古民家」という言葉はこれらのカフェには用いないことにしている。正確な定義がなくて困るのだけれど、古民家とは通常、大正時代より前に建てられた家、つまり築100年以上が経過した民家をさす。そんな家は都心にはなかなか残されていないのだ。