粉花が誕生するまでの小さな物語
現在の姿からは想像ができませんが、無気力で笑わない子どもだったという真由美さん。大人になっても生きる楽しみをみつけられず、悪いことが起きるたびに「やっぱりこうなると思ってた」と醒めた気持ちで反応していたそう。その一方で、本当の自分はこうじゃないはずなのに…と自問自答をくりかえす日々。
「2007年9月に、本気で生きようと思い立って(笑)」
決心した翌月に知人からパン教室を開くように依頼され、1ヶ月後にパン教室を実施。これが大好評を博しました。
「それまではとにかくパンを焼くことだけが好きで、1日に2回も焼いて、自分では食べきれないので人にあげて喜ばれていました。知人にすすめられてパン教室をしてみたら、オーブンを開けたとたんに、参加したみんなが目の前でわーっと喜んでくれました。これを毎日やりたい、と思ったんです」
決心してからはとんとん拍子にものごとが進行し、1年にも満たない早さで、好きだったものが新しいかたちになりました。2008年7月、妹の恵さんと二人で地元・浅草に粉花をオープン。店舗の工事を請け負ってくれた工務店の主は「小学生のとき、隣の席に座っていた男の子」でした。
巧まずして生まれた、小さなおいしいベーカリーカフェ。
「こうしよう、と思って作ったお店ではないので、今後も、自然に起きてくることを楽しみたいと思います」
この素敵な“天然”の魅力、浅草界隈を訪れたらぜひ味わってみてくださいね。カフェのメニューはいたってシンプルで、ドリンクつきのトーストセット(800円)はふっくらした山食パンにバターを塗っただけの素朴なものですが、それで充分に満足できるのです。口中にひろがる豊かな風味を、どうぞお楽しみください。
※パン教室は、粉花のパンと同じレシピ。「カンパーニュの生地で作る小さなパンの会」、「丸パンを焼く会」など、詳細はお店にお問い合わせください。