コーヒーやシチュー作りは奥さまが、自家製ジャム作りやお酒は君波さんが担当。二人はそれぞれ5年前後にわたり下北沢の老舗、トロワ・シャンブルで働き、ネルドリップの技術などを基礎から学びました。
「コーヒーを点てるときは、まず深呼吸して心身を落ちつけてから」という奥さまは、トロワ・シャンブルでコーヒーの責任者としてドリップを任されていた実力の持ち主。
コクテール堂のオールドビーンズを挽き、ネルに粉をセットして細くお湯を注いでいきます。おいしく淹れるコツはなんでしょうか?
「各段階ごとにコツがあるのですが、ひとつ挙げるとすれば、最初の一滴はお湯を粉の上にそっと置くようにすること」
拝見していると、抽出が終了したあとにも、まだ作業がありました。コーヒーの表面に浮かんだ小さな泡を軽く払い、うつわから銅製のイブリック(写真上右)へ、次にイブリックからうつわへと、何度も注ぎ替えます(たぶん酸素を含ませているのでしょう)。そのあとで、イブリックに落としたコーヒーをコンロにかけて少し温めます。
一杯のコーヒーがお客さまのテーブルに運ばれてくるまでに、これだけ手間をかけているお店はそうありません。最近はニュークロップの豆が全盛ですが、昔ながらの珈琲店が洗練させてきたオールドビーンズ独特の深い味わいと濃厚さには、抗えない魅力があります。
下北沢「伊万里」」直伝のシチュー
季節ごとに旬の具材を煮込み、あつあつの状態で提供するシチューは、惜しまれつつ閉店したシチュー専門店「伊万里」で修業したレシピ。シンプルなのに素材のコクが感じられるホワイトソースは、玉ネギをしっかりと炒めて白ワインで煮込んで作ります。おいしく仕上げるポイントはタイミングの見極めなのだそう。
「マッシュルームをバターで炒めて加えますが、これもキツネ色にからっと炒めあげるタイミングが大切なんです」
この日は秋鮭ときのこのシチューをバゲットと共に楽しみましたが、春は春野菜のシチュー、夏にはホタテと夏野菜のシチューなどが登場。ていねいに、まじめに作られた味わいです。用いられるうつわの多くは加満久良のオリジナル。