こぢんまりした空間に集められているのは、もともと島田さんが好んでいた「使い込まれた道具」たち。古い足踏みミシン。いつの時代のものかわからない、錆びついた水中眼鏡のようなもの。銀のカトラリー。遠い時代に異国で綴られた手紙。
窓辺に並ぶガラス製ロートや植物の葉なども含めて、何気ないセンスの良さに目をみはりますが、島田さんの奥さまがディスプレイ関連の仕事に就いており、空間づくりはお手のもの。建物入口の階段まわりや洗面所のたたずまいも魅力的です。
それでも、最初からこの五感に快いしつらいになっていたわけではなく、開店当初は小さなキッチンが客席から見えていたそう。現在ではキッチンが途中まで白壁でさえぎられ、お客さまが落ちつかない思いをすることがありません。
流れていく時間がほんの少し透明度を増すようなこの気持ちのいい場所には、コーヒーの香りと読書が本当によく似合います。ひとりで本を読みに、あるは親しい人とふたりでくつろいで過ごすために、訪れてみてください。常連のお客さまの中には、自転車でふらりと立ち寄る70代の男性もいるそう。