酸味と砂糖が織りなす美しいマジック
さて、私は通常はエスプレッソにもカプチーノにも砂糖を全く入れずに飲んでいますから、この夜も食後のエスプレッソに「お砂糖なしで」とオーダーしました。
「バリスタの仕事は、お客さまとの会話の中から好みをうかがい、その人に合わせたおいしさを提案すること」と考える國友さんは、もちろん笑顔で砂糖ぬきのエスプレッソを作ってくれました。上等の酸味がきゅっと際立つ、おいしいエスプレッソです。
でも、それを飲みながら國友さんと言葉を交わしているうちに、イタリア系のエスプレッソにおいては砂糖が大切なファクターであることに気づいたのです。そこが、ミルクの存在が大きな役割を占めるシアトル系のエスプレッソとの顕著な違いなのですって。
それでは國友さんのおすすめのドリンクを作ってください、とお願いして、2杯目にお砂糖入りのマキアートをいただいたら、小さなカップからひろがった香りの芳醇さ、酸味と甘みの完璧なバランスに目をみはりました。これはもはや、究極のマキアートです。
「エスプレッソの酸味が、砂糖によって非常に丸く、軽くなるんですよ」
ミルクの風味に負けないよう深くローストした豆を使うシアトル系に較べて、それほど深くローストせず、豊かなアロマと酸味を生かした豆を使うイタリア系。
どちらを選ぶかは個人の嗜好によるところですが、このマキアートの素晴らしさ、ぜひ皆さまにも目からウロコの落ちる体験をしていただきたく思います。
太陽の輝く季節にこのお店を訪れるなら、最初の1杯目は、これもまたびっくりすること間違いなしのアイス・カプチーノ(秘密にしておきますが、本当に子どものようにびっくりしてしまいますのでお楽しみあれ!)、2杯目にマキアートというオーダーではいかがでしょうか。
「パンとエスプレッソと」の魅力はまだまだ書き足りないのですが、あまりにも長くなりますので、また別の機会に譲りましょう。
この小さなバール&ブーランジェリーは、さまざまな人の日常生活に小さな輝きをもたらしています。繰り返しになりますが、カフェ好きにとって、こういうおいしいバールと素敵なバリスタに恵まれることは、おそらく人生の三大幸運のひとつなのです。