古今東西のアンティーク時計に囲まれて
銀座6丁目・松坂屋の裏手に、コーヒーのおいしい小さなカフェ『時・・』(じてんてん)が誕生しました。2009年4月にオープンしたばかりなのに、壁や棚を埋め尽くすアンティーク時計とランプのおかげで、まるで何十年も前からこの場所にあったような趣です。
じつはマスター岩崎泰三さんのお父さまは、西洋骨董評論の第一人者として、TV番組「なんでも鑑定団」などでも鑑定士として活躍している岩崎紘昌さん。カフェに置かれている時計やランプたちは、岩崎紘昌さんが世界中から収集したコレクションの一部なのです。
点と点を結ぶ。時と時を結ぶ。
店内で本当の時刻を指している時計はひとつだけ。他の時計がみんなばらばらの時刻を指しているのは、時を忘れて過ごしてほしいという願いの表れだそう。外の通りからビルの2階を見上げたときに目に飛び込んでくる窓辺の大きな時計(写真上右)は、日本の「AICHI TOKEI」社製。廃校になった古い小学校の体育館で使われていたものだそうですが、「そのわりに、時針の影で誰も見えないような場所に、小さくかわいらしい装飾のついた秒針があったりと遊び心を感じます」と岩崎泰三さん。
「30年ほど前に、父が知人の骨董業者から『場所ばかり取って困るから、五千円でいいから引き取ってくれ』と頼まれて購入したものの、結局それからまたずっと倉庫で眠っていた時計です」
暗がりで長い眠りについていた時計が、『時・・』という新たな舞台を得て、日々、お客さまを迎えることに。余韻を持たせた店名は、点と点、時と時、人と人を結ぶというお店のテーマを象徴していますが、眠っていた古時計たちも、時間のかけらとかけらを結びあわされているのですね。