私は2度BEAR PONDを訪れて、2度とも全く偶然にお店を訪れた“優勝者”の方々と遭遇しました。写真上はアメリカで開催されたMillrockラテアート選手権2008で、過去最高得点をマークして優勝したバリスタ澤田さん。そして写真下はジャパンラテアート選手権2009で優勝したバリスタ櫛浜さん。
「隠すものは何もない。そして、失敗も隠さない」と語る田中さんは、気軽に彼らをカウンターの中に招き入れてラテ作りのコラボレーションを楽しんでいらっしゃいました。なんて素敵な光景。私も澤田さんにラテを作っていただきました。
バリスタ人生のスタート
田中さんは大学卒業後、広告代理店に勤務。やがて退社してアリゾナ州立大学に留学し、ニューヨークの広告代理店に入社します。その後、FedExに転職して責任あるポストに就き、在宅勤務の身分に。おりしもニューヨークにスペシャルティコーヒーが伝わってきた2000年のことでした。
カフェが密集するイーストビレッジに自宅があったことから、田中さんは毎日カフェでコーヒーを飲み歩きました。“第3の波”のカフェたちは、積極的にお客さまにカッピングを勧めています。
もともと広告代理店時代に缶コーヒーのPRを担当し、コーヒーに関する豊富な知識を持ち合わせていた田中さん。各店の情熱溢れるバリスタたちとコーヒー談義を交わすなかで、コーヒーの仕事の面白さに魅了されていきました。
決定打はロースター会社、カウンターカルチャー・コーヒーのバリスタたちとの出会い。彼らが開くバリスタ講座に参加したのをきっかけに、1年に渡って徹底したトレーニングを重ねてバリスタ認定証を取得。さらにThe American Barista & Coffee School(アメリカン・バリスタ&コーヒースクール)でも学んでバリスタ認定証を獲得し、コーヒーの仕事に専念するためFedExを退社しました。
田中さんがバリスタ、およびクオリティー・スペシャリストとして実力を発揮した舞台はGimme!マンハッタン店。Gimme!はコーヒー豆のクオリティにもこだわり抜いて、オーナーが直接コーヒー農園に足を運び、コーヒー栽培、収穫、集荷方法まで詳細なデータを収集しています。農園に高品質な豆を栽培してもらい、直接高く買い上げる。それが生産者の生活を守りつつ、優れた品質の豆を手に入れる最良の方法なのでしょう。
BEAR PONDで活躍する焙煎士、
Nori Yoshimi Roasteria(ノリヨシミローステリア)の吉見紀昭さん
コーヒーの生豆が産地から直送されてくると、今度はロースト・チームの活躍が始まります。ここでもまた膨大なテストが繰り返され、細かなデータが積み上げられて、「ピッチャーとキャッチャーのように」バリスタたちと緊密な連携プレーをしながら、最高の一杯のために熱心な仕事が続きます。