日常の香り豊かな脇役として
コーヒーは日々を豊かにしてくれる名脇役、と高山さん。1日1杯のおいしいコーヒーは、決して人生を劇的に変えたりはしないけれど、毎日の暮らしを豊かにしてくれるのだと。
だからこそ、喫茶業は“日常を売る仕事”。
「いかに良い日常を売っていけるかが僕の仕事だと思います」
楽しげにそう話してくれた高山さんのバイブルは、コートドールの斉須政雄シェフが綴った素晴らしい仕事論、『調理場という戦場』。私は2002年のほぼ日刊イトイ新聞での連載中、読むたびに自分に巨大な喝を入れられる思いでした。いまこの本を読んでも、やはり胸に熱いものがこみあげてきます。
「誠実か、言動に恥じることはないか。気力は満ちているか。努力は怠らなかったか。不精になってしまっていないか」
斉須シェフのこの5か条は、あらゆる仕事をしている人が日々、自らに問いかけるべきものなのかもしれません。これを大げさと受けとめるか、身近なものとしてとらえるかは各人の心ばえしだい。
日常の場所であるカフェのほがらかなカウンターでも、この言葉を心にとめてコーヒーを淹れている人がいると思うと、小さな元気が生まれますね。
「鴨川を散歩がてら、もし寄ってみたくなったら、どうぞふらっと遊びにきてください」
旅先で触れる、街の人々のなんでもない日常の一瞬。旅先でカフェに入る最大の魅力は、そこにあります。
【予告編】 2009年10月出版予定の本では、かもがわカフェの魅力をまた別の角度からお伝えします。ただいま京都通いをして、いろいろなお店を取材中。