日あたりの良いカフェに、たくさんの小さな“名物”
いかにも神保町界隈らしい空気が漂う1961年竣工の小さなビル。その4階はかつて、フィギュアの制作者が展示販売スペースとして使用していたそう。2007年5月、大きな窓から明るい陽光のさしこむそのフロアが変身し、カフェとして街の人々を迎え入れることになりました。
猫のように目を細めてまどろみたくなる時間が流れるカフェ・ヒナタ屋のオーナーは鈴木奈緒子さん。インド料理店をはじめとする飲食店に勤務した経験を活かし、友人の協力を得てカフェをオープンさせました。
「仕事帰りの女性がひとりでビールを1杯飲んで帰ったり、中途半端な時間にひとりで食事ができる場所を作りたいと思いました」
しかし、このカフェを訪れるのは食事目当ての人々ばかりではありません。街の雑踏を見下ろす眺めの良さと、「しろうと同然」と本人たちが笑う、のんびりした作り手の醸し出す空気感に惹かれたのでしょう、カフェ・ヒナタ屋はいつのまにか神保町の出版関係者たちが愛用するお店に。他では見られないユニークで魅力的なイベントも多数おこなわれています。
築50年近いビルに残る手動式エレベーター
密かにたくさんの小さな名物を隠し持つヒナタ屋。そのひとつは恐ろしく旧式なエレベーターです。
雑然として怪しげな、くすんだビルの入り口。ややひるみながら急な階段を半階分のぼると、都内に2機だけ現存する手動式エレベーターが待ち受けています。
貼り紙の指示通りに重たい扉を手で開閉すればちゃんと動くのですが、気をつけたいのは現代の電子機器のように瞬時に反応してくれないこと。乗り込んで階数ボタンを軽くタッチしてもたぶん動き出しませんので、しっかりと押しこんでくださいね。昭和映画のひとこまに紛れこんだような情緒をお楽しみください。