うつわを繕う木と同じように、ここではうつわもまた美しく繕われています。 日本には、破損したうつわをこまやかに修復する「金継ぎ」という伝統技法があるのです。アクシデントによって生じた割れや欠けに金継ぎをほどこし、その痕跡を逆に価値のひとつにまで高めてしまう先人たちの美意識と技術には、ただ感嘆するばかりです。 |
馬喰町ART+EATでは、金継をしたうつわで茶事を楽しむ「割れ茶会」がときおり開かれています。
火入れのときに窯の中で割れてしまったようなうつわを集めて、漆で金継ぎをおこなっているのは美術家の?島庸ニ(はいじまようじ)さん。破壊と再生のテーマを探究してきた?島さんのもとには、病人が名医を慕うようにして、割れたうつわたちが自然に集合してしまうそう。
ギャラリーに並ぶ水谷渉さん、水谷智美さんのうつわも、「発掘されたもののような」と武さんが形容する、遺跡で眠っていた土器を思わせるテクスチャー。古傷のあるもの、壊れているかに見えるものが、この空間ではいきいきと語りかけてくるのです。
ごはんのうつわ展
2008年11月、この空間で『ごはんのうつわ展2008』と題して、全国の作家たちによる土の匂いのする力強いうつわを集めた展示がおこなわれました。
会期中には西荻窪の「たべごと屋のらぼう」店主・明峯牧夫さんを迎えて『のらぼうごはんの会 東京で土を想う』という一夜限りの料理イベントもおこなわれ、ぎっしり席を並べたお客さまたちの心に「土」の匂いが深く記憶されることになりました。
土から生まれたうつわ。
東京の土で育まれた野菜たち。
うつわも私たち人間も、いつかは土に還っていく。
この夜出会ったそんな言葉は、もはや日常生活で土を踏んで歩くことのなくなった私に、忘れかけていた風景をいくつも蘇らせてくれたのです。
「のらぼうごはんの会 東京で土を想う」の模様は後日、別記事でお伝えしますね。