高級食材をカジュアルに
メニューにはトリュフやフォアグラ、特選和牛など、カフェらしからぬリッチな食材を用いた料理が並びます。キッチンで腕をふるうのは、ひらまつ系のレストランASOで長年腕を磨いてきたシェフ。高級食材に手のこんだ調理をほどこすのではなく、あくまでシンプルに、しかし技術を活かして的確に仕上げ、レストランより遙かに安価に提供しています。
写真上の「ハーブ豚のグリル ハーブサラダ添え」(1400円)は茨城県産ハーブ豚を使用したメインディッシュ。ひとくち食べて、まず頬を緩ませるのがジューシーな柔らかさ。肉そのものの爽やかな旨みを活かしてさっぱりと仕上げられています。ハーブ豚はオレガノやシナモン、ジンジャー、ナツメグを食べて健康に育つため、肉特有のくさみが少なく、甘みが増しているのですって。
人気料理のひとつは写真左下の「トリュフライス」(1400円)。香ばしいバターライスの上に、手早くとろとろに仕上げたスクランブルエッグがふわりと横たわり、トッピングとして、細かく刻んでたっぷりのバターで炒めた黒トリュフがまぶされています。トリュフ独特の香りがほのかに鼻孔をくすぐり、なぜかスプーンを次々に口に運びたくなるのです。ワインを飲みながらあれこれ楽しんだあとの総仕上げとして最適の一皿。
ワインリストには手頃なカリフォルニアワインから高価な有名銘柄まで幅広く並び、ソムリエも常駐していますが、MERCER
CAFEの精神にのっとってお客さまに肩の力の抜けたアドバイスをしているよう。
「遊び慣れた大人のお客さまに、なめられながら愛用していただけたら嬉しいんです(笑) 気負って行く高級レストランではなく、日常生活の中で頑張らずにかっこよく過ごしたいときに訪れる店として位置づけてほしい」と森野さん。
同時に、お店のコンセプトなど気にせず、なんだかよくわからないけどここが好きだと感じて、ごくオーソドックスに利用してくれるお客さまも大切にしているようです。この夕方、ソファに座っていたのはどこから見ても“普通”の50代とおぼしき男性客。食事はもちろんのこと、仕事の打ち合わせの場としても使っており、週に2度はMERCER
CAFEを訪れるそう。
森野さんは19歳でフードビジネス業界に入り、大阪の「カフェガーブ」の立ち上げを経て人気ラウンジの運営に携わり、本物の松坂牛だけを使った焼き肉をリーズナブルに提供する「M(エム)」などをブレイクさせてきたキャリアの持ち主。Mには日本国内の有名人はもとより、来日したエリック・クラプトンやボン・ジョヴィも足を運んでいるとか。
次ページでは、空間と料理の魅力だけでは語り尽くせないMERCER CAFEの空気感についてお伝えします。