ソーホーのホテルにインスパイアされて
「東京には背広を着る必要のない仕事で活躍する大人たちが増えています。それなのに、そんな人々の世界観にマッチした、彼らが日常に居心地良く過ごせる飲食店が無いと気づいたんです」と森野成貴さん。
クローゼットにネクタイを持たない大人たちは、黒服のソムリエがかしこまってひかえているフォーマルなレストランではくつろげないし、かといってチープな食事では舌が満足しません。
「MERCER CAFEがめざしたのは、そういう大人が楽しむことのできる<フォーマルとカジュアルの間(あいだ)>です」
森野さんをインスパイアしたのはニューヨーク・ソーホー地区に建つスタイリッシュなホテル、The Mercer Hotelのロビーラウンジの空気感。その真髄は、遊び慣れたセレブリティたちをくつろがせる魅力的な“適当さ”にある、と森野さんは分析します。
「ホテルのスタッフがロビーの大きなソファの端にちょっと腰かけて、常連客と会話を楽しんだりしている。そこに扉を開けて入ってきた僕らを見て、座ったまま『どうぞー、フロントはあっちです』なんて指さすんですよ」
もちろん、そういうサービスを不愉快と感じる人もいるでしょう。しかし現地では、慇懃無礼なホテルマンの接客よりもフレンドリーな接客のほうが快適だと感じる自由業の人々が少なくないようです。
「彼らはフォーマルとカジュアルの間で“適当に”遊ぶのがうまいんですね」
魅力的な適当さを支えているのは、空間づくりのセンスと確かな食事のクオリティ。(なにもかもが気軽で、どこでも手に入るものなら、単なるカジュアルな店ですよね)
その2つを両立させたMERCER CAFE TERRACE HOUSEの真価は、お店を知れば知るほど際立ってくるようです。